※ 表をクリックすると拡大・DLができます
▶ 今月のお題
・ ミス・アメリカーナ
・ ワム!
・ リターン・オブ・ザ・キング: エルヴィス・プレスリー低迷と復活
・ ビートルズ ’64
ミス・アメリカーナ
2020年/アメリカ/85分 配信中(Netflix)
監督:ラナ・ウィルソン
出演:テイラー・スウィフト、アンドレア・スウィフト
▶
公式サイト
----------------
16歳でカントリー歌手としてデビューし人気絶頂の歌姫となったテイラー・スウィフトのキャリアと、1998年に初めて政治的主張を公にした精神的な変化を追った密着ドキュメンタリー。
さとうかずみ ★★★★☆
暗黒王 ★★★★☆
若くして名声も金も手に入れて正気でいられるのはなぜかが納得できた。どんな逆境でもテイラーは客観的に自分を見直し、回復することができる。健全な心、理解のある親、気の置けないダチ、温かい家がある。最強。子供たちにはこんな人に憧れてほしいと思う。例の政治発言には相当な覚悟が必要だったみたいだけど、そんな冒険ができるのも、彼女がすべてを持っているから…? トランプが勝った現在、複雑な気分にもなる。
榎本志津子 ★★★★★
ゴージャスな衣装で歌い踊るコンサートシーンでは、ひれ伏したくなるカッコよさなのに、ダサキュート私服で作曲したり、摂食障害をはじめプライベートなことも赤裸々に語る素顔には、弱さも美しさも溢れていてグッと惹きつけられる。なによりも自分が目指す高みへと努力を惜しまず、まっすぐに「正しさ」を考え続ける姿勢には、今を生きる大人として、偽善的だとしてもせめて少しはこうありたいと思う。みんな、こうあれよ。
Taul ★★★☆☆
2010年代のポップスターは、自己をさらけ出す作品でも完璧な振る舞い。意志を掲げるアーティストへの変貌が見事に伝わる。ただ、見せる意識が強くてインスタっぽさも感じた。そんな中、歌詞を夢中で考える様子や、語りかけるようにアコギで歌う場面が自然でいい。言葉をキャッチーに紡ぐ人だと思った。ビートルズで歌ってほしいのは、彼女も親交が深いポールのカントリー調の曲で歌詞が楽しい「夢の人」。素の彼女に合ってると思う。
マリオン ★★★★☆
遠い世界で活躍する人というイメージだったけど、他者からの評価を気にしすぎてしまったり、お利口さんでいなきゃというプレッシャーに苛まれていたりと、テイラーの人間味が感じられる内容になっていて親近感を覚える。そして、いろんな事を言われてもステージに立つ彼女はやっぱり強い信念を持っている人だなと思った。あと、曲作りのシーンで歌詞がポンポンと簡単に出てくるのには驚いた。一線で活躍する人はみんなそうなの?
村山章 ★★★★☆
年の瀬に音楽ドキュメンタリー特集。レビュー作は投票で選んでいるのでさほど作為は働いてないはずだが、4本並べて観てみたらコレってもはやポップミュージックの年代記じゃないですか! 50~60年代のエルヴィス、60~70年代のビートルズ、80年代のワム!、ちょっと飛んで2010年代以降のテイラー・スウィフトと各時代を象徴するポップアイコンの裏事情に飲み込まれる。エルヴィスの登場でロックは巨大な産業と化し、(続く)
リン・ホブデイ ★★★☆☆
It's a man's world 音楽の趣味って不思議なもの。音楽の良し悪しに関わらず好きになれない音楽は好きになれない。テイラー・スウィフトは嫌いでなければ、好きでもない領域に入る。でも今回の一本を通して彼女に対する理解が深まった。若い女性アーティストとして20年近くトップを走って来た功績は並大抵のものではない。そこに彼女の信念と粘り強さがあったとようやく分かった。無関心が理解に変わるのって嬉しいことだ!
ワム!
2023年/イギリス/92分 配信中(Netflix)
監督:クリス・スミス
出演:ジョージ・マイケル、アンドリュー・リッジリー
▶
公式サイト
----------------
わずか4年の活動期間で80年代の音楽シーンを席巻したポップ・デュオ、ワム!の軌跡を、当事者、関係者の証言と記録映像で振り返り、メンバー2人の友情と青春を描き出す。
さとうかずみ ★★★★★
暗黒王 ★★★★☆
ワム!=アンドリューとジョージ、青春の輝き。アンドリューがハッピーで優しい奴だからこそ、ワム!の曲はキラキラしているんだなと思った。親友の秘密を受け入れ、才能を称え、変わらずそばにいる。セクシャリティや親との関係に悩む若きジョージにとって得難い存在だっただろう。やっぱり人生には最高のダチが必要。そして当時のオフショットの彼らが子供過ぎてかわいい。若かったんだね…。
榎本志津子 ★★★☆☆
副題をつけるなら「天才ジョージ・マイケルができるまで」。個人的には「ワム!のジョージ・マイケルじゃないほう芸人」のアンドリューに心を掴まれた。内気な親友を元気づけて表舞台に出し、カムアウトも動じず受け止めて、猛スピードで売れっ子アーティストとしての階段を駆け上がる背中を見守るアンドリュー、めっちゃいい奴じゃん……。出会い~蜜月~才能によって訪れる別れまで、変化するふたりの関係性もせつない。
Taul ★★★★☆
1980年代のポップデュオの顛末だが、親友同士が青春の日々を懐かしんでるみたいで凄い親近感。母親のスクラップブックでの構成が幼なじみアイドルにぴったりで、彼らの活躍と共に陽気な時代が蘇り遠い目になる。そんな二人が互いの違いを受け入れていくのが切ない。解散後ジョージはビートルズの「The Long And Winding Road」を歌ったことがあるが、アンドリューとの道のりへの想いも込めたのではないか。あの輝く歌声を忘れない。
マリオン ★★★★★
思い出のスクラップブックをめくっていくという語り口がまずいい。しかも、そこに綴られた記憶やふたりの関係性が濃密で目が離せない。人気になればなるほどふたつの人格に苦しめられるジョージの葛藤には胸を締めつけられたし、彼の才能と個性を愛し支え続けるアンドリューの献身ぶりにウルっときてしまう。結局、4年間の活動でふたりは別々の道を歩むことになるけれど、そこかしこにふたりの愛情が感じられて感動的だった。
村山章 ★★★★☆
↘その停滞期にビートルズがアイドル路線を拡張し、彼らが拓いたスター街道に80年代に乗っかったのがワム!……という流れか。『リターン・オブ~』は核となる「’68カムバック・スペシャル」にもっとフォーカスしてほしかったが、年代記であるなら入門編的パートも導入部として役に立つ。見習うべき先輩が存在しないエルヴィスの孤独。仲間がいることでなんとか狂騒をくぐり抜けるビートルズ。ワム!やテイラーの時代には(続く)
リン・ホブデイ ★★★★★
Wham bam! 当時はゴス系の友人達とワム!をひたすらバカにしていた。ショボいディスコに行く白いハイヒールを履くセンスのない女子しか聴かない軽いポップだと(私ってひどい!)。この作品を通して自分の偏見が180度変わった。初期の曲は特にパンクのレヴェル精神を受け継ぎ、ラップの要素を取り入れ、天才的だったな〜と。何よりもアンドリューが献身的にマイケルを支えた姿勢に涙が……。偏見が解けるのって素晴らしいことだ!
リターン・オブ・ザ・キング: エルヴィス・プレスリー低迷と復活
2024年/アメリカ/91分 配信中(Netflix)
監督:ジェイソン・ヘーヒル
出演:エルヴィス・プレスリー、プリシラ・プレスリー
▶
公式サイト
----------------
1960年代に活動の軸を映画に移し、人気にかげりが見えていたエルヴィス・プレスリーが7年ぶりに観客の前でパフォーマンス。奇跡の復活を遂げた伝説的TV特番への道程を追う。
さとうかずみ ★★★☆☆
暗黒王 ★★★☆☆
悲劇的な伝記映画を観たせいでプレスリーを「伝説的スターだけど金儲け主義のために壊されてしまった人」として捉えていたけど、本作は彼が最高に輝いていた瞬間をフィーチャーした内容で、リアルタイムを知らない私からすると新鮮だった。ミュージシャンのピュアネスを理解する人がいつも彼のそばにいてくれたらよかったのに。彼を語る関係者、ファンの人々の夢見るような表情が、彼の偉大さを思わせる。
榎本志津子 ★★★☆☆
エルヴィスについてもっと濃厚に描いた映画はほかにも存在するし、貴重なライブ映像が観られるとはいえ、今作はエルヴィスの人生譚は薄味め。ただ、演奏中に見せる輝きはやはり唯一無二だし、なにより2018年にテイラー・スウィフトが闘う50年前には、白人男性でも「商売道具」は自分の言葉を語らせてはもらえなかったんだな、と改めて思う。人間の考えを表わす言葉と、それをのせる歌について考えさせられる1本。
Taul ★★★☆☆
1950年代のキングの復活劇。「最近やわなバラードばかりで、ロックンロールは歌わないの?」という、ビートルズと面談時のジョンの言葉に応えたかのよう。やはりワイルドに歌う姿が合ってるし、68年のTV特番では艶っぽさも加わり最高だ。ファンが囲む小さなステージにした人に拍手。新鮮味に欠ける本作だが、奇跡的な番組だったと再認識できた。ポールが彼の声を真似た「Lady Madonna」という曲があるが、エルヴィスの唱法は発明だ。
マリオン ★★☆☆☆
落ち目になったエルヴィスを復活させた「’68カムバック・スペシャル」がいかに素晴らしく、彼の原点が詰まっているかを語ってくれる。それはいいことなのだが、正直なところ『エルヴィス』や『プリシラ』で見たことある内容だなと思ってしまった。でも、エルヴィスの関係者や共演者、プリシラ(本人)、彼に影響を受けたアーティストたちがこれを語っていることに意味はある。コナン・オブライエンはよく分からないけど。
村山章 ★★☆☆☆
↘ショービジネスのシステムがガチガチに固まって、いかにしてレールに乗れるかの勝負になっていく。誰もが肥大するエゴと向き合い葛藤するが、男たちにとって究極的には自己表現の追求が至上命題に見える。しかし女性であるテイラー・スウィフトは、グッドガールという呪縛に苦しみ、やがてひとりの当事者として、性差別や人権の蹂躙といった現実にある社会問題と向き合わずにいられなくなっていく。テイラーが政治的発言を(続く)
リン・ホブデイ ★★★★☆
Long live the king エルヴィスのバイオピックが多い近年。しかし悲劇のロックスターの象徴としてエルヴィスを後世に残すのはあまりにももったいない。このドキュメンタリーは敢えて彼のプライベートライフを省き、彼のアーティストとしての戦いに焦点を当ててくれる。貴重なアンプラグドライブの映像を通してエルヴィスの魂の篭った声に惚れ惚れした。その稀な才能をもっと賛嘆すべきだと感じた。−★はコメンテーターの皆さん。
ビートルズ ’64
2024年/イギリス、アメリカ/107分 配信中(Disney+)
監督:デヴィッド・テデスキ
出演:ジョン・レノン、ポール・マッカートニー
▶
公式サイト
----------------
1964年2月、イギリスで大成功を収めたザ・ビートルズがアメリカに初上陸。たちまち全米に熱狂を巻き起こした2週間のツアーを、貴重な記録映像を交えて社会現象として考察する。
さとうかずみ ★★★☆☆
暗黒王 ★★★☆☆
64年のアメリカ、激動の時代にビートルズと出会った人たち。彼らに熱狂し叫んでいた少女(現在マダム)が「今でもビートルズが流れてくると冷静でいられない」って涙目で語るのが印象的だった。我を忘れて夢中になれる「推し」が魂を救済するんですよね、今も昔も。私は超無知なので、ビートルズと聞くとちいちゃい眼鏡かけてまったり歌うジョンしか連想できなかった。こんな究極アイドルだったのか…。
榎本志津子 ★★★★☆
ビートルズという神バンドの初上陸を、アメリカはどう受け止めたのか。当時のファンの熱狂映像と、その渦中にいた人物の語り、バックステージのメンバーの素顔が、時代の空気がはらんでいた熱を丁寧に伝える。印象的なのが、メディアが楽曲よりも髪型のことばかり話すこと。あれはヅラなのか地毛なのか、変な髪形、等々。一見くだらなく思うけど、脱マッチョをひと目で表わす大きな要素だったんだな。キャラデザ、だいじ。
Taul ★★★★☆
1960年代の英ロックアイドルの米国制覇。ファンになってウン十年。見知ったことばかりかと思いきや、切り口に工夫があり見応えがあった。演奏や情報はネットにあるので控え目に、多彩な人物や記録映像の「個人の声」により、熱狂を生んだ本質や当時のアメリカに迫るという試み。人種やジェンダーなどの多様な視点があって現代的だ。彼らを語る人々の生き生きとした表情よ! 私も変革の時代を生き「抱きしめたい」を生で浴びたかった。
マリオン ★★★☆☆
アメリカに降り立ったビートルズ。その熱狂ぶりは凄まじいものがあった。劇中の半分を黄色い悲鳴が埋め尽くしていたような気がする。一方で、ビートルズへの拒否反応もしっかりあって、まさに社会現象だった。また、当時のアメリカ社会の不安や暴力などにも触れ、さまざまな視点から時代を見つめ直しているのも見事。というか、世界各国のビートルズがはじめてやって来た!エピソードでそれぞれドキュメンタリーが作れそうだね。
村山章 ★★★☆☆
↘決意し、大人の男たちが「いままでチームでやってきたじゃないか」と翻意させようとする展開はもう商業VS音楽の対立でなく商業VS人間の対決。テイラーが希望を捨てまいとと書いた「Only the Young」はいささか優等生的で、エルヴィスが大佐の抑圧から己を解き放った「カムバック・スペシャル」の凄みには及ばないが、彼女が背負っているもののデカさ重さをひしひしと感じたりした。4本セットの壮大なシリーズと捉えるなら★5つ。
リン・ホブデイ ★★★★☆
From Me to You 60年代アメリカにビートルズが初上陸する映像満載。エルヴィス同様、ビートルズは黒人音楽の影響を受け、新しいサウンドを確立した。彼らのライブに行って黒人と白人のカップルも生まれたとの証言は感動的。また、彼らが多くの歌詞にYouを使うことによってファンの心を刺さったと言う技法は作詞家としてとても興味深い。イギリス人にとってビートルズはどこか当たり前の存在。その有り難さにもっと早く気づくべきだった。

Olivia Rodrigo - all‐american bitch
Olivia Rodrigoの来日公演で聴いた「all‐american bitch」。日常のイヤな事を思い浮かべて一斉に会場中で叫ぶライブ演出は、映画『サポート・ザ・ガールズ』のラストシーンのようなシスターフッドを感じて泣いた。Taylor Swiftみたいな先輩たちが撒いた種は確実に実っているよ☆
Idina Menzel - Defying Gravity
イディナ・メンゼルが歌うウィキッドの劇中歌「Defying Gravity」をYouTubeでふと見て心打たれ、『オズの魔法使』を観直し、来年公開の映画版の予告を観たりしているうちに気づいたら劇団四季の「ウィキッド」(大阪)のチケットを取っていました。音楽はいつだって私たちを遠くに連れて行ってくれるね……飛行機取らなきゃ……
Oasis - Supersonic
Oasis「Supersonic」を初めて渋谷のタワーレコードで試聴して衝撃を受けてから30年。今年は思いつきで向いてない仕事をして秒で辞めたりしたけど「自分自身でいなきゃなんねえよ、だってテメェにしかなれねえんだから」という歌詞に今さら励まされました。なお来日ドームチケットは完敗です。まだ諦めない!

The Beatles - Help!
村山さんからアイデアをいただき、面白い!と思い、好きなビートルズに絡めたレビューを始めた。最初の『エア・ロック 海底緊急避難所』は、ピンチ満載で単純にこの曲が浮かんだ。それ以来この素っ頓狂な試みを続けてるけど、映画にもビートルズにも失礼がないように、曲を見つけてこじつける💦のが毎回大変で、よく頭の中にこだましてます。
YOASOBI - モノトーン
YOASOBI「モノトーン」を聞いたとき「どうしよう」と頭を抱えた。なぜなら『ふれる。』評で書きたかったことが全部歌われていたから。村山さんから「もっと飛べるでしょ!」と言われて「Ayaseの歌詞に負けてたまるか!」と締切ギリギリまで悩んで書いただけあって思い出深いレビューになりました。
ano feat. 幾田りら - 絶絶絶絶対聖域/幾田りら feat. ano - 青春謳歌
主題歌がある映画が好きでして、主演としても素晴らしかった幾田りらとあのがデュエットした「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」二部作の2曲! ほとんど役と不可分になったふたりが向かい合って歌うTHE FIRST TAKEのバージョンが、シンプルになったアレンジも含めて最強。
Ramin Djawadi - House of the Dragon
仕事柄、ボーカルミュージックを聴くと分析モードに入るので、好んで聴くならサントラの方がほっとする。今年1番聴いた音楽は敬愛するラミン・ジャヴァディ氏の「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」の壮大なサントラ。経理などをする時に我が心に夢を吹き込んでくれる。I believe in dragons!
メールアドレスの登録で最新号が届きます。次号のお題は『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』『ライオン・キング:ムファサ』『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』『ビーキーパー』を予定!