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・ 破墓/パミョ
・ トラップ
・ ロボット・ドリームズ
・ イマジナリー
破墓/パミョ
2024年/韓国/134分/PG12 10月18日公開
監督:チャン・ジェヒョン
出演:チェ・ミンシク、キム・ゴウン
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巫堂(朝鮮半島のシャーマン)ファリムと弟子ボンギルは、世継者が謎の重病に罹るという富豪から高額でお祓いの依頼を受ける。先祖の墓に原因があるのを突き止め、風水師と葬儀師にも協力を仰ぐが——!? 韓国で大ヒットしたオカルトスリラー。
さとうかずみ ★★★☆☆
榎本志津子 ★★★★☆
キャラ立て大勝利&秀逸なWバディもの。巫堂ファリムとその弟子ボンギルの若きふたりと、風水師サンドクと葬儀師ヨンギルのベテランふたり。1対1と2対2、そして4というお互いが信頼を寄せて悪霊と闘う姿は胸熱だし、美しいボンギルの、ファリムへの献身ぶりに脳が焼かれた。韓国の葬儀や墓地にまつわる文化や風習、歴史を知らずに観ても最高だったし、ボンギルのカッコよさには、都度頭を抱えるほど。このボンギルがすごい!2024。
奥浜レイラ ★★★☆☆
葬儀師、風水師、巫堂(ムーダン)とお墓まわりで働くチームのお仕事ムービーとして最高だった。韓国公開時「墓ベンジャーズ」という異名で人気になったのも納得。儀式のシーンはもう少し観ていたかった。超現実的な現象にCGを極力排して生っぽい手触りにしたのもオカルト墓ホラーとしての最適解。後半の韓国と日本の歴史をめぐるテーマを匂わせる、前半に散りばめられたセリフやモチーフについても深掘りしたくなるほど吸引力が持続する良作。
Taul ★★★☆☆
風水師、葬儀屋、巫堂コンビのお墓に集合する4人のチーム感が魅力。年齢や性別、恋愛も関係なく、お互いプロの仕事に徹してクールなのが今どきらしい。でも時に同じジムにいたり、夜食を食べたりで、仲良し萌えもちゃんとする。そう言えばビートルズも『アビイ・ロード』のジャケットでは、神父、葬儀屋、死者、墓堀り人のお墓に向かう4人で、集合!と歌う「カム・トゥゲザー」から一体感があって最高。パミョっぽいチームはいいぞ。
touch ★★★☆☆
「大きなヤマを狙ったら死体がゴロゴロ出ることになる」って地面師も言ってたよ。とにかくメイン4人のキャラクター造形、関係性が秀逸。特に恭順な弟子の巫堂役のイ・ドヒョン、あんなん沼すぎるでしょ。風水や陰陽五行の理屈がいまいち飲み込めず、朝鮮の地理・歴史的知見も浅いまま観たのがかなり悔やまれる。解説を読み漁ってからの再鑑賞で評価が上がりそうな予感。墓掘りで得た財(土→金)の宴で締めるラストが粋。
マリオン ★★★☆☆
プロフェッショナルに徹する魅力的なキャラクターや見ているだけでトランスしそうな儀式シーン、おぞましい化け物とのバトルなど『来る』を彷彿とさせるアッパーなテンションが貫かれていて楽しかった。それにしても、墓に隠されていたアレが出てきたときの衝撃よ。日本が朝鮮民族の力を削ぐ名目で風水的に重要な場所に杭を打っていたという都市伝説も初めて知った。過去の遺恨は今もどこかに眠っている。決して忘れてはならない。
村山章 ★★★☆☆
オカルトスリラーとして取り立てて面白いとは思わないのだが、世界観の構築とキャラが良い。オジサンから若者まで、マンガみたいな設定を絶妙なバランスで具現化する最適なキャストが顔をそろえた。特にファリム役のキム・ゴウン。ツンもヨシ、スゴむもヨシ、怯えるのも日本語の発音もヨシ。しかも踊りも歌も上手くて、それが作品特有の空気感を生み出している。シリーズじゃないのに3作目ですよみたいに始まる居直りも良かった!
トラップ
2024年/アメリカ/105分 10月25日公開
監督:M.ナイト・シャマラン
出演:ジョシュ・ハートネット、アリエル・ドノヒ
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愛娘のために人気絶頂アーティストの激レアチケットを入手した殺人鬼のクーパー。ところがライブ会場では正体不明の連続殺人犯を捕らえるための厳戒態勢が敷かれていた。クーパーの必死の脱出チャレンジが始まる。楽曲を提供し、歌姫役を演じたのは監督の実娘サレカ・シャマラン。
さとうかずみ ★★★★☆
榎本志津子 ★★★★★
延々続く歌姫レディ・レイヴンのライブパートが、曲やパフォーマンスはもちろん、照明や演出に至るまでまじ最強。彼女のファン(エキストラなのに)が放つ熱狂もありありと伝わってくる。閉じ込められ、逃げ道を探してそわそわ動き回る殺人鬼ジョシュ・ハートネットに「おとなしく座ってろ!ライブの途中でしょうが!」と怒りたくなるほどの臨場感。あの尺とあの役を実の娘に用意したのをはじめ、全編にシャマランパワーが炸裂した1本。
奥浜レイラ ★★★★☆
他所の人にトップシークレット喋りすぎな!とか、ビッグなアーティストなら四六時中マネージャーが張りついてるだろ!とかツッコミどころは多いものの、考える隙を与えずどんどん展開する話法がうまくいった好例。ただ重要な役割を担うレディ・レイヴンのキャラ造形がやや単調で、楽曲の調子も一辺倒なので5年先の活躍が想像できずコンサートシーンが長く退屈に感じた。ステージで一番印象に残ったのは秋田こまちみたいなダンサーの衣装。
Taul ★★★☆☆
ヒッチコック風味を現代でやるのが楽しいが、それ以上にシャマランの親バカぶりが凄い。映画監督の次女の作品を製作した次は、歌手の長女を歌姫にして映画を撮ってしまう。さらにこれが娘に優しい殺人狂の話で、映画作りに狂い、迷惑をかけ好奇の目に晒されてるパパだけど仲良しだよね、と自分たちを重ねてるようにも見える。ビートルズに自らをネタにした曲「ジョンとヨーコのバラード」があるが、これはもう「シャマランと娘のムービー」ね。
touch ★★☆☆☆
ケレン味ひと筋30年。今回はどんな大どんでん返しが?と期待され続ける父シャマランの苦悩、推して知るべし。作劇を押し通すためのハッタリ演出、強引な展開はともかく、虐待サバイバーでOCD(強迫性障害)の犯行と決めつけて社会的スティグマを助長する安直なプロファイルは今時いかがなものか。結局は娘シャマランのライブパフォーマンスを世界中に見てもらうのが目的、壮大な親バカホームビデオでした……という罠?
マリオン ★★★★☆
世界的歌姫(娘シャマラン)のコンサートに仕掛けられた罠から脱出を試みる殺人鬼パパというシチュエーションが面白い。しかも、最後まで捻りとサスペンスが行き届いていて最高だった。また、殺人鬼パパがシャマラン作品らしい愛を乞う哀しき存在であるのも印象的。歌姫から「自分を傷つけた人を許せる人はスマホのライトを付けて」と促されて観客が応える中、ただ一人会場を眺める彼の姿は個人的に今作一番の名シーンだと思う。
村山章 ★★★★★
シャマランは『オールド』でも劇中のヒット曲として実娘サレカの曲を使い親バカぶりを発揮していたが、今度は人気絶頂の歌姫役で映画初出演。しかも舞台は満員御礼のアリーナ。娘のために巨大コンサートまでお膳立てした謎の時間が続くのが可笑しいし、シャマランはソレ込みでちゃんとオモシロに仕上げるのだから天才! にしても脱出劇の背景と思ってたサレカが第二部であんなに活躍するとは、史上屈指の突き抜けた親バカに敬礼。
ロボット・ドリームズ
2023年/スペイン・フランス/102分 11月8日公開
監督:パブロ・ベルヘル
出演:イヴァン・ラバンダ
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80年代のニューヨーク。孤独なドッグは、通販で購入した組立式ロボットと絆を育む。ある夏の日に海水浴へ出かけると、ロボットが錆びて動けなくなってしまった。ロボットを放置したままビーチが閉鎖され、季節は移ってく。第96回アカデミー長編アニメーション賞ノミネート作品。
さとうかずみ ★★★☆☆
榎本志津子 ★☆☆☆☆
劇中に出てくる『オズの魔法使』も、ドッグが読んでいた「ペット・セマタリー」も、「不可抗力で去らざるをえなかった者が、もといた場所へ帰る」物語だ。とくに後者は、愛する者が死んだ時、遺された者はどうするのか?という普遍的問いを投げかける傑作小説なのだが、そこで描かれた、土が入り込み爪がはがれても、固い土壌を掘った男と同じくらいの血の熱さで、ドッグがあの砂浜を掘ったとは、わたしには到底思えない。
奥浜レイラ ★★★★☆
呑気に観始めたところ、会えなくなった友人やかつての恋人に抱いた想いが脳内を巡り、エンドロールを迎える頃には息切れを起こすような鑑賞体験となった。自分しか知らなかったささやかな感情を他者に共有できた時に感じる幸せや、執着に化けた恋心を泣きながら手放した相手であってもやがてきれいに記憶の上書きがされることなど、私たちがいちいち説明をせずに折り合いをつけてきた情のあわいがちょうどいい温度でこちらに流れ込んだ。
Taul ★★★★☆
心踊る80sNYCグラフィティだが、実に沁みる話だった。必要なものを得ても別れはつきもので、いい思い出を胸に前へ進むしかない。喪失ばかりの長い人生の中で、もはや萎縮していたその感覚の急所をぎゅっと掴まれた。思い出を歌う「セプテンバー」がぴったりだったが、EW&Fは同年のヒットに、人生に君が必要と歌うビートルズのカバー「ゴット・トゥ・ゲット・ユー・イントゥ・マイ・ライフ」があり、それもあのカセットに入ってるはず!
touch ★★★★☆
ロボットは再会の夢を見るか。落ち込めばシュンと萎れて、喜べばパタパタと振れる犬の尻尾のいじらしさ。背景に描き込まれた個性豊かな動物たちがまたそれぞれの暮らしを想像させる。インターネット普及前の80年代NYが舞台モデルというのが設定の妙だが、あの世界のロボットはどういう存在なのだろう?「友達を金で買って所有する」という違和感だけが引っかかる。おそろしく速い万引き、オレでなきゃ見逃しちゃうね……。
マリオン ★★★★★
親愛なる君へ。孤独が染み渡る日々が遠い昔のことのように思える。そう思わせてくれたのは君のおかげだ。だから、とても辛かった。もし叶うのなら、君とハロウィンの仮装をしたり、ソリ遊びを楽しんだりしたかった。この手紙はたぶん届かないけど、街中で流れる「September」から君の鼓動を感じたように、君も僕のダンスを思い出してくれたら嬉しい。君も僕もニューヨークに生きる人なのだから。孤独だったドッグより。
村山章 ★☆☆☆☆
80年代ネタを詰め込んで、在りし日のNYを持ち上げる。「セプテンバー」という曲名やツインタワーから想起する911はほぼ関係がなく、核にあるのは過度なノスタルジーと、監督も経験したであろうこじらせた孤独や恋愛の痛みや執着心を、ほろ苦くてエモい感動話に昇華させたいというエゴではないか。鑑賞後に原作を読み、大筋は一緒でも、原作の美点である静かな余韻がやかましい感傷と音楽で上塗りされていたことを知り愕然とした。
イマジナリー
2024年/アメリカ/104分 11月8日公開
監督:ジェフ・ワドロウ
出演:ディワンダ・ワイズ、トム・ペイン
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夫とその娘たちと暮らすジェシカは夜ごと悪夢に悩まされていた。一家は空き家状態のジェシカの実家に引越し、次女アリスは古いテディべアを見つけて会話するようになる。子どもの想像力を微笑ましく思うジェシカだが、恐ろしい事実に気づく。『M3GAN/ミーガン』のブラムハウス最新作。
さとうかずみ ★★★☆☆
榎本志津子 ★★☆☆☆
ミーガンちゃんのクマ版を期待して観に行くと大きな肩透かしを食らう(食らった)。クマちゃんはがんばっていたけど、所詮はクマ。ちょっと移動が速いくらいだし、一生懸命怖いお顔をしてみたところでたいして怖くない。後半はホラーというよりもダークファンタジーな展開で、それまでぎくしゃくしていた継母と養女姉妹、ぽっと出の老婆がどうにか団結し、ガール・パワーで「なんとかなれーッ!」(Ⓒちいかわ)って闇と戦う物語。
奥浜レイラ ★★☆☆☆
余計なジャンプスケアもまたブラムハウス印。でも回数が多くて、びっくりさせたいんだかイラつかせたいんだか分からなかった。序盤の長女の友人による「ベストフレンド」や「ベストチーム」と書き込まれたSNSのポストのカットは、アメリカ的な仲間信仰や家族信仰の呪いをぼんやりと想像させてよかったのと、血縁ではないさまざまな世代の女性たちが寄ることで「必要なのは血じゃなくて想像力!」と訴えてくるのも賛同できた。
Taul ★★☆☆☆
映画は大味だったが、幼い頃の辛い記憶について改めて考えた。辛さを抱えたままは良くないし、辛い記憶がない人は、誰かを慕い泣きついて、優しくされて消えたのではないだろうか。私は母と祖父の顔が浮かぶ。ビートルズのお伽話風の曲「クライ・ベイビー・クライ」の歌詞「子よ泣け、母を慕え」は、母親と離れがちなことに強がっていたジョンの後悔が込められてると思う。イマジナリーフレンドもいいけど、眼の前の人に泣けばいいよ。
touch ★☆☆☆☆
メッキが剥がれつつある「ブラムハウス」ブランド。イマジナリーフレンドを題材にしたホラーという手垢つきまくりジャンル畑で、すでに同スタジオの『ミーガン』が暴れ尽くしていて、あまつさえ続編が製作中という状況で、なぜこの企画にゴーサインが出たのか疑問。ジャンプスケアに偏重した恐怖演出、中盤まで冗長かと思えば終盤は雑になる語りに閉口。画面が暗すぎて何が起きているのか判然としない観客の"想像力頼り"も致命的。
マリオン ★★☆☆☆
恐ろしい何かが暗闇でうごめいているのに、画面が暗くてよく分からない。それをカバーするかのようにジャンプスケアが散りばめられていて、ビビりな性格の自分には辛いところ。せっかく悪夢的な世界観が広がっていて、不気味な造形のクリーチャーが登場するのに、もっと視覚的に怖いと思わせてほしい。ただ、イマジナリーフレンド実在論者おばさんのキャラクターや想像力には想像力で立ち向かうんだよ!展開は面白かった。
村山章 ★★★★☆
序盤はベタな家族のメロドラマで辟易しかけていたのに、だんだん物語が“珍”に寄っていき、怪奇現象と戦うチーム・レディースが結成されるに至ってナニコレ?面白くね?とヘンなスイッチが入って以降は超楽しい。終盤はファンタジーに全振りしていて、それも段ボールでセットを組んだようなアナログな異世界なのがキュート。不機嫌長女は終盤、速攻であのバカげたアイテムを集めて火をつけたから駆けつけられたのかな。アッパレ!

某市に遊びに行く機会が何回かあって、その都度友だちに「ここで発砲事件があってね」とか素敵話を教えてもらい、にこにこしています。
『破墓/パミョ』については韓国ソウルのホテルで書くことにして、街を歩きながら墓を探しましたがひとつも見つかりませんでした。

高峰秀子(愛称・デコちゃん)の生誕100年企画で、各地で上映や展示が行なわれていて、デコ活💦に勤しんでます。※今月もビートルズに絡めたレビューです。

年末に集中する映画祭・特集上映にてんてこまい。時間とお金のやりくりに頭を抱えてます。同じ客層を食い合っていることに早く気づいてくれ〜!
『イマジナリー』を見に行った次の日に38.9℃の発熱。病院に行ったらコロナでした。これがチョンシーの呪いか。
『イマジナリー』は映像が暗すぎという話をよく聞くのですが、近所のシネコンの映写は良し悪しはあるけど全体に明るくてよく見えた。画が暗い映画はセンター北を推奨。
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