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▶ 今月のお題
・ HOW TO HAVE SEX
・ 墓泥棒と失われた女神
・ インサイド・ヘッド2
・ ツイスターズ
HOW TO HAVE SEX
2023年/イギリス・ギリシャ/91分 7月19日公開
監督:モリー・マニング・ウォーカー
出演:ミア・マッケンナ=ブルース、ララ・ピーク
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タラ、スカイ、エムの仲良し3人組は、卒業旅行でパリピが集まるクレタ島のリゾート地マリアを訪れる。ホテルで一緒になった青年たちと親しくなり、タラは男性との初体験への期待に胸を膨らませるが……。第76回カンヌ国際映画祭ある視点部門グランプリの青春ドラマ。
さとうかずみ ★★★★☆
榎本志津子 ★★★☆☆
90年後半にサブカル女子がみんな読んでた岡崎京子の漫画みたいな映画。「アタシたちズッ友だョ♡」とか言って、無理やりはしゃいで大声で笑って、楽しさを自己演出するくせに、くだらない男相手に処女喪失はするし、内心はずっと孤独で空っぽ。そのがらんどうの中をアホみたいなEDMが爆音でかかり続けるあの退屈さとばかばかしさには、たしかにかつて感じた10代のリアルがあった。けど、あの感じってZ世代にも有効なやつ?
Taul ★★★☆☆
若者にとっては痛い内容では。初体験やその相手選びがマウンティングの道具になっているし、被害者になりやすい危険性に女性自身が無防備で、男性のほうはあまりに無自覚だ。心の内を描かずに問いかける作風だし、ぜひ若者(特に男性)に観てもらい、主人公の気持ちや、なんで傷ついたのかなど、ディスカッションしてほしい映画だった。10代の自分には分からなかっただろう。遅いけどこれ観て反省しまくりです。
マリオン ★★★★☆
孤独を深めていくタラを見るのが辛い。「周りはみんな経験してる」とか「早く大人にならなくちゃ」とか。そんなことを考え出したらどんどん自分が惨めな存在に思えてしまうではないか。親友たちの大人びているマウントもキツいし、将来のことを考え出したら不安になってしまうし、周囲のノリに馴染めていない自分が嫌になる。この感覚はきっと誰もが心当たりがあるはず。できればこの真夏のパーティーのことは早く忘れたい。
まるゆ ★★★★☆
冒頭から「マリア」という見知らぬ場所、若者たちのテンションの高さを映像なしの表現で惹きつけてくる。主人公タラの持つコンプレックスは「誰もそんなこと気にしてない」と周りから言われても簡単に呪縛は解けない。今作はSEXにおける「性欲」と「好奇心・憧れ」のバランスの危うさ、「性欲」が勝った場合の暴力性とその取り返しのつかなさを、本人の選択以外にも他人の思惑や言動を絡めて、残酷かつ爽やかに描き切っている。
村山章 ★★★★☆
パリピ要素のない生物なので主人公の少女たちがハメを外しに繰り出すクレタ島のウェイウェイ感が楽しいのかどうかもわからない。が、クレタ島には行ったことあった。30年以上前、ミノタウロス伝説の宮殿跡で遺跡なんてただの石にしか見えんなとバックパッカー2人で半日座っていた。あの寂寥感も彼女らのウェイ感もどん詰まりの若者という意味で同根だったかも知れない。テーマ的には全中高生が性教育の一環で一度は観るべきかと。
リン・ホブデイ ★☆☆☆☆
Misspent Youth 映画のメリット・デメリットについて書くべきだが、保守的なイギリス人の独断偏見のレビューになっちゃう💢 3人組の16歳の女の子たちがクレタ島に遊びに行く……イギリスの野郎たちと飲んで、踊って暴れるため。恥ずべきイギリスの若者文化。観光しないの?なぜ親達がこの旅を許したの?兎にも角にも危ないわよ!と親心が芽生えた。それは置いておいて女の子の初体験の虚しさがうまく描かれていると思う。
墓泥棒と失われた女神
2023年/イタリア、フランス、スイス/131分 7月19日公開
監督:アリーチェ・ロルヴァケル
出演:ジョシュ・オコナー、イザベラ・ロッセリーニ
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公式サイト
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忘れられない恋人の影を追う男の数奇な物語。考古学愛好家のアーサーは、古代エルトリア人の遺跡を発見できる不思議な力があった。それを利用して仲間たちと墓を荒らし、日銭を稼いでいたが、ある日、稀少価値を持つ女神像を発見する。
さとうかずみ ★★★☆☆
榎本志津子 ★★☆☆☆
オカルト好きなので「墓泥棒」と聞くと、古代エジプトのピラミッドを暴いた盗賊が次々と怪死した話を思い出し、この作品でも、いつその呪いが発動するのか期待したけど、残念ながらまったくそういう話ではない。誰ひとり呪われないし、不思議な力をもつ男性が、新しいものと古いものが隣り合わせに存在する美しいトスカーナで、穴に潜ったり、走ったり、海に首をぶん投げたりする、他人が話す昨夜見た夢みたいな話だった。
Taul ★★★★☆
私は映画を見ていると、内容に合わせ、自分の記憶や妄想をたどって夢見がちになることがあり、そこに好きな映画が重なるととても心地よい。終わって目覚める感覚も好きだ。本作はまさに夢想的な感覚になる作品であり、主人公は、私の好きなロッセリーニのように遺跡を巡り、フェリーニみたいな祝祭に招かれる。さらに、彼が旅の終わりに見るのは生々しい現実の感触であり、自分の思いとすべて繋がって、私は心安らかになった。
マリオン ★★★★☆
過去に魅せられ、過去に生かされ、過去に祝福される。消えた愛する人を追い続ける墓泥棒は今日も遺物を探して彷徨う。もしかしたら過去に囚われてしまった哀れな男に見えるかもしれない。でも、過ぎ去った時間が人生を動かしてくれることだってある。決して報われることのない旅路。それでもわずかな光を見つける瞬間がある。小さな穴の先にいる女神は墓泥棒に優しく微笑む。過去が創り出した幻想的な夢に抱かれるひと時だった。
まるゆ ★★★☆☆
ジョシュ・オコナーの見た目から来る圧倒的な主役感とは裏腹に、鑑賞後は女性という存在自体が主役であるようにも思えた。彼の持つアンニュイさを最大限に活かしたキャラ設定と全編通して渇望する彼女を美化しすぎないところも好印象。イタリアの田舎町の風景とゆるさも相まって、独特なラストへと着地する。何度も示されていた赤い糸がここに繋がるなんて、なんてロマンティック! あと、アルバ・ロルヴァケルの顔が大好きです。
村山章 ★★★☆☆
この主人公ジョナサン・リッチマンに似てんなぁ最近もなんかで同じこと思ったっけ、あチャレンジャーズ!あのテニス男もジョナサン・リッチマンに似てるってずっと思ってたけど、アレ?どっちも同じ役者じゃね!ってジョナサン・リッチマンのことばっか考えてたのは映画に没入できてなかったんでしょうが、終盤、女性コミュニティに居つけなかった主人公には、破壊をもたらす男性側としての自省と居心地の悪さがあったんだと思う。
リン・ホブデイ ★★★☆☆
Tomb Raider イタリア語の原題は「ラ・キメラ」日本語に訳すと「とりとめない夢想にふける」。まさに真夏の夢を観ている気がした。好感度高いイギリス俳優のジョシュ・オコナーが演じるアーサーは過去への憧れを追い続ける。その過去とは亡くなった恋人であり、古代エトルリア人の埋葬品を発掘することだ。失われた女神の像を発見するシーンは美しく涙を流した。アーサーは赤い糸を辿り恋人の元へ戻れるか?
インサイド・ヘッド2
2024年/アメリカ/96分 8月1日公開
監督:ケルシー・マン
出演:エイミー・ポーラー、マヤ・ホーク
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人間が抱くさまざまな感情を擬人化して脳内世界を描いたディズニー&ピクサー作品の続編。少女ライリーの頭の中では5つの感情たちが、彼女の幸せのために日々奮闘していた。しかし彼女が思春期を迎えたある日、「シンパイ」ら新しい感情が現れて、司令部が乗っ取られてしまう。
さとうかずみ ★★★☆☆
榎本志津子 ★★★☆☆
数秒ごとに嵐が来るみたいな思春期は、周囲だけじゃなくて本人も戸惑うくらいめちゃくちゃ厄介。そんな繊細で凶暴な季節のライリーの頭の中は、新たに仲間入りした感情たちが大暴れ……なんだけど、みんなこんなにキャラ立てしてまで胸の内を理解したいものなのかな。とくに十代の感情なんて複雑に絡み合い、どうにも理解できないこともあるはずなのに、勝手に一般化され、わかりやすくまとめられた心理分析の教材を見た気分。
Taul ★★★☆☆
自己形成の過程を描いて良く出来てる。ただ、構造上の制限はあるにせよ、前作の展開に似すぎだし、ほぼ継承で新鮮味には欠ける。かつてピクサーに(たとえ続編でも)あった「これ、映画で初めて見る具現化だ!」という驚きはなかった。ディズニーの戦略に合わせ、見やすく儲かって次も作れる良く出来た作品、と言ったら大人の嫌味で皮肉な感情だろうか。「5」まで続けば、そういった感情の葛藤があるかな。頑張って付き合おう。
マリオン ★★★★☆
『HOW TO HAVE SEX』を見て落ち込んでしまったものだから、今作も見るのが少し怖かった。でも、自分の中にあるさまざまな一面を感情たちがギュッと抱きしめてくれる優しい映画になっていて嬉しくなる。思春期に突入したライリーの迷走や拗らせぶりを見て自分の中のシンパイが暴走してた頃を思い出して身悶えしそうになったが、いい面も悪い面も含めて一言で表すことのできない自分らしさ最高!と高らかに言いたくなった。
まるゆ ★★★☆☆
前作は未見。序盤の「いい子であることが正義」の価値観に、吐き気がするほどの拒絶感を持ちながら観ていた。終盤はまさにそこをひっくり返してくる展開で、まんまとピクサーの掌の上で踊らされていた自分に恥ずかしくなるも腹は立たない。年齢や置かれている立場によって、その人の核となる感情が異なるのも、このシリーズを通して伝えたいことの表れなのだろう。自身の頭の中のリーダーがずーっとJOYであることを願うばかり。
村山章 ★★★☆☆
インへ1は大雑把に切り分けられた感情どもが宿主の人格や人生をコントロールしようとして精神崩壊に追い込むホラーであり、人間を短絡的に理解したり支配しようとしちゃダメだよと思ったが、9年ぶりの続編はまさにそこを反省する話。そもそもムチャな前提から始まっているのでそりゃそうなるよというスンとした気持ちと、良かったねという気持ちが相半ば。でもライリー、そろそろ挫折もしといた方が人生ラクになるんじゃないかな。
リン・ホブデイ ★★★☆☆
So Many Emotions ピクサー映画は親子で観て楽しめるイメージ。『インサイド・ヘッド2』も例外ではない。(実は90歳の父親と一緒に鑑賞した)どの人も自分の感情によって動かされるという設定で、今回は主役のライリーの思春期と共に新しいチームがやって来る。リーダーであるシンパイがライリーの日常を激しく振り回す。さあ、どうなるか? 50代の私の頭の中はほぼダリィ(アンニュイ)とノスタルジアで占めていると実感。
ツイスターズ
2024年/アメリカ/122分 8月1日公開
監督:リー・アイザック・チョン
出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ、グレン・パウエル
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気象学の天才ケイトは、昔の友人ハビから連続発生中の竜巻対策の協力を頼まれ、故郷オクラホマに戻る。そこで出会ったストームチェイサーでユーチューバーのタイラーらと共に、前代未聞の計画で巨大竜巻の破壊に挑む。
さとうかずみ ★★★☆☆
榎本志津子 ★★☆☆☆
アメリカでは竜巻は身近な災害で、被害を最小限に治めるのは喫緊の課題なんだろうけど、いくらなんでも人力で制御しようというのは、あまりにもエゴがすぎるよ。頻発する竜巻などの異常気象は人間の環境破壊も原因じゃないの?という疑問をまるっと無視して、強大な自然を前に、人間が恐怖しひれ伏すばかりになるのを良しとせず、怖ければ立ち向かえ!克服しろ!というマインドに、アメリカの開拓魂をものすごく感じました。
Taul ★★★★★
ハリウッドの伝統的な実写の娯楽大作がなければ死んでしまう身としては、こういうのが劇場で観られ何とか生き延びてる。それも、災害時は人助けを考慮、ロマコメ風味もベタベタしない、有害でないマッチョさと、いろいろ適度にアップデート。お馬鹿さを残しながらも、現代に合わせたそのバランス感覚が絶妙で、多くの人が楽しめるものになってて好感。日本でヒットしてない悔しさを噛みしめながら5回楽しんだ。4DXもまじ凄い。
マリオン ★★★★☆
ガソリンスタンドに集うストームチェイサーや主人公たちの団結にアメリカの魂を垣間見たような気がする。立場も境遇も異なる人々が集まって大きな脅威に立ち向かっていくという物語に希望を感じたし、自然の美しさと残酷さに惹かれてしまうという視点があるのもいい。そして、竜巻から避難した人々を守る最後の砦が「映画館」なのも、時代が変わってもここだけは守っていこうよというメッセージのように思えて感動的だった。
まるゆ ★★★☆☆
デイジー・エドガー=ジョーンズのヒロイン感とグレン・パウエルのお得意キャラが健在。この点だけでも映画としてアドバンテージがある。主人公だけは毛嫌いするけど、彼の事をママは最初から気にいるなど、分かり易いラブコメと竜巻映画としてスクリーン鑑賞を楽しんだ。ただ、ハッピーエンドの片隅で、主人公のトラウマである亡くなった友人たちの顔がチラつく。彼女の成功の裏で、彼らの家族のことを思ってしまう。
村山章 ★★☆☆☆
主人公にトラウマを与えるために生贄にされる冒頭の仲間、専門家の警告を聞かず竜巻に巻き込まれる愚かな脇キャラ、逆に親子連れとかは死なないでしょうと思える安心設計。つまりはパッケージの都合で登場人物を生殺与奪してるのに、人の命が一番大事みたいな話をされても信用ならんのです。ハビの相棒が竜巻きの前に取り残されてウシシとはなれんよ。命の扱いが軽いジャンル映画はあっていいけど、そうじゃないフリはしないで。
リン・ホブデイ ★★★☆☆
Peak Americana ツッコミどころ満載だが、一昔前のハリウッドを思い出させる超大作。話題のグレン・パウエルが演じるタイラーは最初チャラいYouTuberに見えるが、蓋を開ければセンシティブなナイスガイ。嫌いじゃない。ヒロインに媚びる演出は気になったが、デイジー・エドガー=ジョーンズも好演。監督のアメリカの田舎への愛が直に伝わり、広大なオクラハマの景色は気持ち良かった。(竜巻を除けば)

『ツイスターズ』で久々にひどい画面酔いをしたので、画面酔い仲間(誰?)の皆さまにおかれましては重々お気をつけください。

こんな酷暑を過ごしていると、かつてのようなキラキラとした夏映画というものは、もう生まれないのでは、とさえ思ってしまう。
ルクア大阪でその人に合った映画をおすすめする映画紹介屋というイベントをやることになりました。よかったらぜひ来てください!

ここ数年「行ったことがない映画館で鑑賞する」という目標を立てている。今年はシネマート心斎橋になりそうなのだけど、まさかの最初で最後の鑑賞になるなんて!
なんで『ツイスターズ』は『フランケンシュタイン』を引用した?あれは人造人間の悲劇なんで、気候変動は人災というメッセージ?
世界情勢を見て落胆することが多いけれど、エンタメの大切さを改めて実感する今日この頃。
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