※ 表はクリックで拡大できます
▶ 今月のお題
・ イノセンツ
・ 猫と、とうさん
・ マイ・エレメント
・ バービー
イノセンツ ↑
2021年/ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデン 7月28日公開
監督:エスキル・フォクト
出演:ラーケル・レノーラ・フレットゥム、アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ
▶
公式サイト
----------------
『わたしは最悪。』などヨアキム・トリアー作品で共同脚本を務めたエスキル・フォクトによるサイキックスリラー。ノルウェー郊外の団地の夏休み。仲良くなった子どもたち4人が不思議な力に目覚め、恐ろしいことが起こりはじめる。
さとうかずみ ★★★★☆
榎本志津子 ★★★☆☆
さんざん言われていることだけど、要は『童夢』。場所を移し、登場人物を置き換え、現代をまぶした「童(わらべ)のひと夏の夢」。したたる夏の緑も、降り注ぐ光も、猫も、人間も、世界のすべては大人と子供でこんなにも感じ方が違う。些細なことでもすぐ理解して助けてくれる大人もいなければ、善性だけでできてる子供もいない。清濁併せ持つ存在だとわかった上で、序盤でアレをアレしたあいつ、アレだけは許せん。
Taul ★★★★☆
子どもの善悪や生死の境が曖昧な残酷さを描くのがほんとに上手い。自分も虫やカエルでひどい遊びをしたこともあったので、無邪気さゆえの罪が暴かれるような恐ろしい面白さ。その点では名作『禁じられた遊び』や『汚れなき悪戯』を思い出すレベル。そんな無垢の恐怖から、エンタメ要素多めのサイキックバトルになり飽きさせない。子どもが佇む公園を映すだけであんなスリリングになるとは。元ネタ『童夢』は未読で新鮮だった。
マリオン ★★★★☆
超能力という飛躍はあれど、子どもが見ている世界や道理を見事に捉えている。世界の複雑さをまだ認識できないからこそシンプルな判断基準になり、自分の感情を制御できずに衝動的に振る舞ってしまう。一歩間違えば残酷さに転じてしまう危うい無垢さは見ていてスリリングで、いとも簡単に暴力に振り切れてしまう瞬間はとても恐ろしい。しかも、平気で大人に干渉してくるではないか。油断ならない奴としての子ども像として100点。
まるゆ ★★★★☆
『TITANE チタン』を思い起こさせる冒頭から、全くもって、こどもたちの愛らしい物語ではないと宣言し、その想像を遥かに超えてくる作品。元ネタ(それ自体も未読)があると知らずに観たせいか、よりピュアに楽しめたのも良かったのかも。こどもたちだけの世界の描き方、弱き者がヒーローになる瞬間にゾクゾクする。特筆すべきは舞台となる団地の佇まい。北欧の説明がなくとも独特の空気を感じられる。早く積読のパンフを読まないと!
村山章 ★★★★☆
児童文学の大家ケストナーが「生まれつきロクでもない子供はいるのです」とずいぶんミもフタもないことを書いていたのを思い出した。実際この映画の子供たちはたまたま「超能力」という触媒を通じて善か悪かの選択を迫られていて、ほんとどっちに転ぶのか紙一重なのだが、ある子供の道行きについては徹底的に容赦ないのがリアルでいい。子役たちの演技も含めて妙な説得力に満ちていて、「子供映画」というジャンルの新たな名作では。
猫と、とうさん ↑
2022年/アメリカ 7月28日公開
監督:マイ・ホン
出演:ネイサン・ケーン、ジェフ・ジャドキンス、 デヴィッド・ジョバンニ
▶
公式サイト
----------------
俳優兼インフルエンサー、ベイエリアの技術者、路上で暮らす男性、消防士、スタントマン、トラック運転手など、コロナ禍で試練の年となった2020年を、愛猫と共に乗り越えた9人の男性たちの姿をとらえたドキュメンタリー。
さとうかずみ ★★☆☆☆
榎本志津子 ★☆☆☆☆
猫を飼いはじめたら、なんと! 仕事をゲットできたし恋人もできて、SNSのフォロワーも爆増、バズりまくり!グッズも売れたし、背が伸びて難関校にも一発合格!人生バラ色です♡♡というおじさんたちの俺語りドキュメンタリー。背が伸びる以降はもちろん嘘だけど、開運グッズ的なツールとしての猫と、それと暮らす「俺」の話がほとんどで、鼻につくことしきり。猫と人間との絆ではなく、猫がもってくる金の話。
Taul ★★☆☆☆
アメリカでは「男は犬、女は猫」という固定観念が強いことを知る。日本では「独身でペットを飼うと人生終わり」と揶揄する風潮が未だにあるようだ。その意味では猫好きのオジサンやシングルの背中を押してくれる作品。何より彼らがポジティブになる様子は心地よい。でも全体にインスタのストーリーを眺めてるような上辺っぽさだし、男らしさの解体を語るのはとってつけたみたい。ドキュメンタリーに求める鋭い切り口は無かった。
マリオン ★☆☆☆☆
監督のインタビューによると猫を飼う男性というパブリックイメージの解体や男らしさの呪縛からの解放などをテーマに挙げているが、これらのテーマが深掘りされているようには見えない。猫を飼っているさまざまな男性たちの話をただ並べているだけ。ホームレスのエピソードは見応えがあるものの、テーマに沿っているかと言われると疑問が残る。かわいい猫はたくさん映るが、それならInstagramを見た方が手っ取り早い。
まるゆ ★☆☆☆☆
猫とは縁のない生活を送ってきた。猫好きでなくとも、猫がいる人生の一幕を窺い知ることができる。飼い主のメインを男性に絞ったことで、浮き彫りになるもの、猫の存在を通して見えてくるものがあった。ただし、猫を心の支えの存在としつつも、逸脱しているとうさん。一見美談に思えるエピソード、それは誰にとっての行動なのか。これらをないまぜに描いているだけに感じた。ちなみに、わたしの最近のイチオシはマンチカンだ。
村山章 ★☆☆☆☆
最初に出てきた飼い主の時点から、ちょっとおかしいぞという匂いはしていた。4匹のネコを可愛がってることは疑わないが、ネコ動画でバズりを目指し「今は彼女とかは考えられないな、目の前のチャンスに集中したいんでね!」とアメリカンドリームな抱負を語る売れない役者。無名の庶民がたやすく落ちる承認欲求や誘惑の暗い穴がボコボコ出てくるのに、監督はそこに一切踏み込もうとしない。ドキュメンタリー作家として怠慢でしかない、としか。
マイ・エレメント ↑
2023年/アメリカ 8月4日公開
監督:ピーター・ソーン
出演:リーア・ルイス、マムドゥ・アチー
▶
公式サイト
----------------
『アーロと少年』のピーター・ソーン監督によるピクサーアニメ。火・水・土・風のエレメントが暮らすエレメント・シティ。家族の店を継ぐのを夢見る火の女の子エンバーは、ある日心やさしい水の男の子ウェイドと出会う。異なるエレメントのふたりだが徐々に親しくなっていく。
※ 実際の発音は「マムドゥ・アチェイ」が近いですが、混乱を避けるため一般的な表記に合わせています
さとうかずみ ★★★☆☆
榎本志津子 ★★☆☆☆
画面は本当に美しい。水と炎と雲と草のエレメントたちが、建造物や乗り物などの質感の異なるものと自然に溶け込んでいる表現はすばらしいと思う。が、肝心の物語のほうはすべてが唐突かつ雑。ストーリーが展開する間、えっこの人、そんなキャラだった?ここまででそんな話してたっけ?って困惑しているうちに大団円を迎えていった。描きたいこともわかんなくないけど、もうちょっと丁寧にやってほしかったなあ。
Taul ★★★★☆
障害を乗り越えるロマンスが熱くて泣ける。2人の化学反応は恋愛に限らず、合わないと言われても勇気を出して触れ合ってみてはというメッセージでは。エンバーのようなメンタルの問題は以前身近にもあって、うまく癒せなかったので刺さる。ただ現実社会の匂わせが多いので、特権的な水は何の象徴であの無自覚さはいいのか、そのおこぼれで道が開けて良しなのか、など気になる点も。アニメーションは凝ってて綺麗で文句なし。
マリオン ★★★★★
火と水のラブストーリーに胸キュンしつつ、事業承継問題に思い悩むエンバーに深く共感してしまう。なぜなら自分も実家の家業を継がないといけないと思い込んで苦悩したことがあるから。親は図らずも子に期待をかけてしまい、子は親の想いを察して本当の気持ちを押し殺してしまう。つい最近まで自分も似たような状況だったので、どちらの気持ちもすごくよく分かる。彼女が選んだ道はまるで今の自分を見ているようだった。
まるゆ ★★★☆☆
エンバー(火のキャラ)の呆れるほどの自業自得さにわたしの方が火になりそうな序盤。その理由が明かされた時、自分の中でモヤモヤが落ち着き、ウェイド(水のキャラ)と混ざり合った気がした。あのビジュアルなのに、色気や恋心を表現できているのはスゴイと思う。原題の『Elemental』というタイトルから期待した部分が、ほぼ火と水だけのエピソードだったのは残念。エンバー母娘の描き方も物足りなかった。
村山章 ★★☆☆☆
目くじらを立てるほどの映画ではない、と思いつつ、後から考えるほど納得いかない部分が沸々と。特に厄介なのは、明白に格差社会や差別の問題を扱っているのに「悲劇をエンタメとして消費する有閑富裕層」が無邪気で善良な人たちとして機能してしまっていること。貧しい移民の娘の自己実現がブルジョワ一家の気まぐれな善意で実現するラストの皮肉を、なんでか一緒についていくお坊ちゃんに託しているなら相当意地悪だと思いますが。
バービー ↑
2023年/アメリカ 8月11日公開
監督:グレタ・ガーウィグ
出演:マーゴット・ロビー、ライアン・ゴズリング
▶ 公式サイト
----------------
世界で人気のファッションドールを実写映画化。バービー人形たちが夢のような毎日を繰り返すバービーランド。しかしバービーのひとりが身体の異変に気づく。完璧な自分でなくなった原因を探るべく、ケンと共に人間の世界に向かうが、そこはバービーの理想と程遠い世界だった。
※ 実際の発音は「マーゴ・ロビー」「ライアン・ゴスリング」が近いですが、混乱を避けるため一般的な表記に合わせています
さとうかずみ ★★★★☆
榎本志津子 ★★★★☆
男女の行動や考え方あるあるが連発で描かれるから「そう、それ!」と頷き赤べこになったけど、そこに居心地の悪さを感じて「説教くせえ映画だな」と思う人も多そう。けど、ここまでポップでわかりやすい形にしないと、みんな観ないじゃん。バービーたちやリアルワールドの母娘など、女性陣が細やかなのに対して、バービーありきのケンたちとかアランとか、マテル社の社員ら男性陣の描写があっさり気味だったのが残念。
Taul ★★★★★
幼い頃、姉のお人形遊びの輪に入ってたが、プロレスっぽく遊ぶようになり追放された私はすでにケンだったのか。男の王国に酔うケンの様子に大笑いしながら、最後重荷を脱ぎ捨てる姿に泣いていた。本作、極端な男女二元論で世界を戯画化し笑い飛ばし、縛られてるのは古い価値観ではないかと「憑き物落とし」をするかのようだ。その上で変化を受け入れ新しい一歩を踏み出そうと。バービーを題材にしたコメディでここまでやるのが凄い。
マリオン ★★★★★
自分の中にある不確かさを認め、可能性を探し続けるバービーやケンに勇気づけられる。社会に蔓延る性規範に晒され、誰もが自分らしさに不安を覚えてしまう。それでも今作はフェミニズムを通じてあらゆる人生を祝福し、肯定してくれている。その試みは完璧に果たされたわけではないが、ビリー・アイリッシュが歌う「What Was I Made For?」と共にこれから波及していくはず。すべてに開かれた優しい世界になるために。
まるゆ ★★★☆☆
実は監督としてのグレタ・ガーウィグは、俳優としての彼女と比べると苦手意識がある。残念ながら今作でも更新することはなかった。それがなぜなのか?を確かめるために過去作を観てみようかと思うほど、刺激のある作品には違いない。好きなシーンももちろんある。先人へのリスペクト溢れるシーンにグッとくるし、バービーについて何も知らなかった(上辺だけのイメージ)と気付かされた。わたしには眩しすぎるのかもしれない。
村山章 ★★★★☆
多くのレイヤーがある作品だけど自分にとっては全編が「生きる孤独と寂しさ」にあふれていて終始物哀しい時間を満喫した。監督も似たコメントをしていたが、人生において人はアイデンティティだと信じていたものを手放し、苦労して見つけた居心地のよさや大事な人を捨てたり失わざるをえない局面が繰り返してある。劇中でまさにバービーやケンが体現していたことであり、その痛みは死ぬまで続くのだなあという憂いの沼に溺れていました。
汚れた軍手だと思って道端で拾った猫が、二十歳を迎えました。
海外旅行を久しぶりに考え始めるも円安、燃料高と向かい風が強すぎる。で、Google Mapとかで見てるうちに行った気になってしまうというダメな状態です。
かき氷食べたり、盆踊り大会に行ったり。今年も夏イベント、クリアしました。なので太陽さんそろそろ気温下げてくれませんか?
最近、家呑みアイテムに力を入れてます。暑くて氷が間に合わないので、何年振りかに製氷器を使って、ロックアイスとセルフ氷を併用。こうなったらアイスペールを買わねば!
コロナに罹患。集中力を根こそぎ持ってかれてアメリカズ・ゴット・タレントの名場面集ばっか見てた。