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▶ 今月のお題
・ aftersun/アフターサン
・ 怪物
・ ウーマン・トーキング 私たちの選択
・ M3GAN ミーガン
・ スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
aftersun/アフターサン ↗
2023年/イギリス、アメリカ 5月26日公開
監督:シャーロット・ウェルズ
出演:ポール・メスカル、フランキー・コリオ
脚本も手がけたウェルズ監督の長編デビュー作。11歳の時にトルコのリゾート地で父カラムと過ごした夏休みを、20年後に当時の父と同じ年齢になったソフィーが振り返る。父役のポール・メスカルがアカデミー賞主演男優賞ノミネート。
さとうかずみ ★★★☆☆
Taul ★★★★★
昔、中学生の頃、堅物の父が涙してたのを見てしまい、胸の奥にしまい込んだのを思い返した。本作は記憶の断片の人の姿から、今の自分なら何を思っていたかが分かるのではないかと、想像すること自体を観客とシェアする作りになっている。真実は掴めないので切なすぎる行為なのだが。主人公の父親を思う心情が私自身の思いと共鳴し涙が溢れてしょうがなかった。ここまで巧みにこのような仕組みを構築した映画はなかったと思う程だ。
まな ★★★☆☆
自分の親との関係はもっとドライなので感傷的にのめり込むことはあまりなかったが、心地よい距離感で叙情的な撮影・演技を美術館でアート作品を観るように鑑賞した。一つひとつの色彩、光のゆらぎ、行動、表情のチョイスに意図がしっかり込められているように感じられ、それを受け止め読み取ろうとする時間がとても豊かだった。カラオケのシーンだけは、お父さん娘を一人で歌わせないでよ〜!!とめちゃくちゃじたばたした。
マリオン ★★★★★
鑑賞後、映画館のロビーで両親のことを考えた。自分が子どもだった頃、両親はどんな気持ちだったのだろうか。一度聞いたことはあるのだが、当時の体感と過去を振り返ったときの体感はまた違う気がする。きっと答えにはたどり着けないのだろうなと思った瞬間、今作が自分にとって忘れられない一作になった。思い出を何度繰り返しても真実は分からないけれど、思いを馳せ続けることはできる。切ないけれど、そう願いたい。
みえ ★★★☆☆
少女が11歳のときに父と過ごしたひと夏が、当時のホームビデオ映像を交えて描かれ、父が何らかの弱さを抱えていたことはわかるけど、実のところ何があったのかよくわからない。この語り口が良い。ビデオ映像以外の場面は、大人になってビデオを観る娘の回想のはずで、記憶の中の父との時間。そこに描かれるのは、ぼんやりとテレビ画面に映る影や鏡越しの姿が多く、曖昧な記憶に鮮明な哀しさが残る感覚の映像化が見事だった。
村山章 ★★★☆☆
主人公の記憶を断片として見せることで、観客側が自分の記憶や体験で映画を補完する。確かに普遍性が宿るアプローチで、監督発言を読んでも納得することばかり。しかしこちらの都合としては自分と向き合いたいモードではなく、もっと作品を探求させてくれという気持ちが勝ってしまった。旅先なのに現地に興味を示さない父親の空虚さは気になったが。あと重箱の隅だけどトルコの朝は大音量のコーランで起こされるんじゃないかしら。
怪物 ↗
2023年/日本 6月2日公開
監督:是枝裕和
出演:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太
是枝監督が人気脚本家・坂元裕二とタッグを組み、カンヌでは脚本賞とクィアパルム賞を受賞。音楽は故・坂本龍一が手がけた。シングルマザー、小学校教師、2人の少年たちらそれぞれの視点を通して学校で起きたケンカとその後の顛末を描く。
さとうかずみ ★☆☆☆☆
Taul ★★☆☆☆
昔、小学生の頃、カンニングしてた子の証拠を見つけ出し得意気になっていいつけたら、「その子のことも考えましたか」と先生に言われハッとしたのが蘇った。本作をそんな思い出と同レベルで語るのはどうかと思うが、当事者の方の意見に耳を傾けると、弱者の痛いところを露呈する作劇を楽しみ過ぎたと思うし、当事者の視点ではまったく見れてなかったと感じた。初めエンタメの面白さだけを見てた自身の怪物性に改めて気づいた。
まな ★☆☆☆☆
繊細な少年たちの物語を、なぜ「どの立場も皆大変だよね」という話の中に丸め込んでしまったのか。事前の会見やインタビューでの監督の受け答えからもわかるように、クィアの話を掘り下げて語る気などなかったようだ。マジョリティ向けには気づきがあるから良いのではといった言説がどれだけ残酷なことか。そういう側面をすべて差し引いても、登場人物が皆ストーリーの駒としてのキャラ付けしかなされておらず、胡散臭かった。
マリオン ★★★★☆
ありふれた日常に無自覚な加害性やマイノリティへの偏見が詰まっている1幕目と2幕目がとても苦しかった。あまりにもよく見る風景であり、誰もそんなことを気にも留めていないという事実が重くのしかかる。3幕目でより良い世界になってほしいという願いを込めたのは分かるが、現実がどうしようもなさすぎて絶望が勝ってしまう。自分も含め、世界はまだ台風の真っ只中で埋もれ続ける泥をかき分けている最中なのだ。
みえ ★★☆☆☆
立場が違えば見える世界は変わる。それぞれが自分に見えている側面だけで判断すると、同じ物事に対して全然違う見方をしていることがある。そんな様子を3つの視点から順に語る構成は面白い。デリカシーのなさゆえに悪意なく他者を傷つける大人たちも、うんざりするほど良い。でも、子どもたちが現実離れして見えた。子どもの世界って、理屈の通らない善意と悪意がむき出しで、もっと理不尽で残酷だと思うので。
村山章 ★★☆☆☆
現実の社会問題を扱っていても、エモい美しさで“映画”をくるまずにいられない虚構性が「是枝監督的」だと思っていて、自分の好みと相容れないところなのだが、あざといほどの狙いに満ちた坂元裕二脚本においては職人的な演出の冴えが発揮されることは発見だった。しかし第三部になるとよりエモさが前景化し、審美性を優先してなにか大事なことがそっちのけになっている気がしてしまうあたり、やはり是枝監督らしい映画だと思う。
ウーマン・トーキング 私たちの選択 ↗
2022年/アメリカ 6月2日公開
監督:サラ・ポーリー
出演:ルーニー・マーラ、クレア・フォイ、ジェシー・バックリー
南米ボリビアで実際にあった事件をもとに執筆された2018年の同名ベストセラー小説を映画化。2010年、自給自足で生活するキリスト教一派の村で、女たちが度々レイプされていたことが発覚。男たちが街へ出かけ不在の2日間、女たちは自らの未来について話し合う。
さとうかずみ ★★★★☆
Taul ★★★☆☆
昔、中学生の時の体育の時間に女子の衣類が失くなる事件があり、学校側からは女子にだけ注意があったみたいで、男子はちゃんと向き合わなかったことを思い出した。史実を元に見事な寓話に昇華させた本作では女性たちが積み上げていく議論に感動したが、実際であれば事件に向き合って話し合うべきは男性側のように思う。その点ではオーガストを置いたのが秀逸で、彼の視点で考えることができるし、彼に託されたものは大きい。
まな ★★★☆☆
女性たちの対話がとにかく丁寧でいつまでも聞いていられるだけに、途中途中で休憩をはさむ演出のチョイスは好みではなかったが、生活と地続きであるということを表すための選択だと知り納得はした。色味も抑えない方がその方針に合っている気がする。女性と男性に立場が分かれる話の中で、トランス男性のキャラクターがいることはとても重要だと思うので、もっと掘り下げて描いてほしかった。
マリオン ★★★★☆
大昔の話かと思いきや、2010年の出来事だったという衝撃。尊厳を踏みにじられた女性たちが意見をすり合わせながらひとつの方針を決める過程を通じ、対話の重要性や赦しの概念、男たちが陥っている男性らしさの呪縛などに改めて気づかされる。そして、話し合いに同席する唯一の男性の存在もとても重要だ。彼女たちの対話を記録し、使命を託されることになった彼の存在はすべての男性に向けられている。
みえ ★★★★☆
男性に虐げられてきた女性たちが、立場や意見の違いを越えて対話を重ねる姿は、話し続けているだけなのに見ごたえがある。でも、女性をとりまく世界の現実を再確認させられるようで辛い。男性の良心を代表するかのような書記係は、かつて村を追われた境遇にあっても男性というだけで光の下に生き、本人は光の中にいる自覚がない。それに比べ、大人の女性は光のない世界にいる。色彩を抑えた映像は、そんなふうにすら見えた。
村山章 ★★★★★
広範囲な議論がセリフのひとつひとつに落とし込まれていて、作品に注ぎ込まれた知性の総量に圧倒される。それでいて少女たちが髪の毛を結び合ったり、女たちが家事に戻ったり、誰かの感情が爆発しそうになると議論より寄り添うことを優先したり、話を進めるだけではない寄り道が繊細に綴られており、本当にサラ・ポーリーは信用と信頼に値する映画作家だなと。しかし象徴的役割とはいえオーガスト一人が背負うのはデカすぎるな。
M3GAN ミーガン ↗
2023年/アメリカ 6月9日公開
監督:ジェラルド・ジョンストン
出演:アリソン・ウィリアムズ、ヴァイオレット・マッグロウ、エイミー・ドナルド
『ソウ』シリーズのジェームズ・ワンとブラムハウス製作のサイコホラー。おもちゃ会社の研究者ジェマは、事故で両親を亡くした姪ケイディを引き取ることに。開発していたAI人形M3GAN(ミーガン)に、ケイディを守り友だちとなるようプログラミングするが…。
さとうかずみ ★★★★☆
Taul ★★★☆☆
昔、幼い頃姉とバービーでままごとをしてる時、人形プロレスをやってしまいよく叱られた。ミーガンのような存在が戦うのはもともと好きだったのかも。可愛いらしい彼女が恐ろしい行動に走るのを、コメディとホラーを行ったり来たりしながら見せていく手法に魅了された。トラウマを抱えた少女とのシスターフッドもいい。最後はもっと90年代風のドラマチックな戦いが好みで、勝手に展開を考えてる。いろいろ妄想でき続編も楽しみ。
まな ★★★☆☆
設定の理屈や盛り上げ方には物足りなさもあるが、とにかくミーガンというキャラクターのキャンプさが最高。なぜ踊るのか、なんて理由はいらないのだ。ミーガンの音楽の趣味が良いところも好き。ほかの部分のほどよい軽さと比べ、傷ついてどんどん扱いづらくなるケイディの描写がやけにシリアスだった。続編があるらしいが、背が伸びてもぜひ今作の子役に続投してもらってまた踊ってほしい。
マリオン ★★★★☆
ポップミュージックの選曲や不気味でかわいいビジュアルで踊るM3GANなどミーム化するのも納得なキャッチーさ。テクノロジーへの依存によって難しくなった親子関係の育み方といったテーマにも触れていく深さもある。そして、そこまでグロくないというのも実は重要なのかも。ホラーはグロテスクで敬遠されがちなジャンルなので、気軽に多くの人がホラーの醍醐味や怖さを味わうことができる敷居の低さは貴重だと思う。
みえ ★★★★★
AIロボットのミーガンの邪悪さが最高だった。少女を守るようプログラムされたはずが、自己の存在を守るよう学習していき、不気味さと凶悪さがエスカレートする。これが痛快で、どんどん狡猾で残虐になっていくのに、行け行けミーガン!と応援したくなる。大人の勝手でこの世に生を受け、大人の都合で理不尽な思いをさせられる子どもが、反旗を翻すよう。そんな姿をミーガンに見て、爽快感でいっぱいになった。
村山章 ★★★★☆
ミーガンはどうして踊るのか?もちろんソウルメイト設定されたケイディと一緒に覚えたダンスだからだが、クライマックスの殺戮シーンで踊る必要ある?おそらく必然性はないし、脚本家も「ミーガンが殺しまくる、と書いたら踊っててビックリした」と語っている。監督にすれば単に「面白いから」でしょうが、AIに自分を鼓舞する衝動とパッションと奇妙なユーモアが芽生えたわけで、こんなロボット好きにならずにいられないよ!
スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース ↗
2023年/アメリカ 6月16日公開
監督:ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソン
出演:シャメイク・ムーア、ヘイリー・スタインフェルド、オスカー・アイザック
アニメーション映画『スパイダーマン スパイダーバース』の続編。さまざまなユニバースのスパイダーマンが集結する拠点に辿り着いたマイルス。しかし過酷な運命が立ちはだかる。
さとうかずみ ★★★☆☆
Taul ★★★★☆
昔、地域で一番伝統ある高校に進学したが、校則は古臭く、髪型や服装も厳しくて、だんだん嫌になり別の高校の仲間とツルむようになった。旧世代の価値観による規範に支配されるのは抵抗があるし、個性を試してみる自由さがないのはしんどい。そういった話だと思い当時の心境が蘇りゾクゾクした。途中情報が多過ぎる気もしたが、その分フリも万全で、次作では困難を乗り越えてヒーロー像のアップデートがされる予感。
まな ★★★☆☆
マイルスやグウェンのティーンらしくもカッコいいキャラクターデザインや成長ぶりがとにかく嬉しい。しかし躍動感は変わらず楽しいものの、情報の詰め込み具合や見づらい色合いの世界は前作とは違い評価できず。物語も次作へつなげるためにいったん悪者を作らなければならなかったような印象が強く、好きだったピーター・B・パーカーも赤ちゃんを抱けとやたら言ってくる意味の分からないキャラクターになり悲しい。
マリオン ★★★★★
カノンイベントなる運命を押しつける大人たちに抗うマイルスに泣いてしまう。たとえ世界を狂わせたとしても個人の選択に気持ちをのせてしまうセカイ系マインドな自分にとって、マイルスの意志と勇気にとてつもない感動を覚えるのだ。また、運命=原作設定と置き換えて反抗するという構図は、狭量な原作至上主義者や間違った認識でポリティカル・コレクトネスを批判する者へのカウンターにも見えて溜飲が下がった。
みえ -----
多種多様な質感の絵と動きをつめこんで、見たことのない映像が目まぐるしく展開するのがすごい。でも情報量が多すぎて、私の頭が追いつかない。あまりにも理解できないもんだから、字幕と吹替で計3回観た結果、見覚えのある場面でも話を追えていなかったことが判明。私の意識がマルチバースに飛んだのか。きっとどこかの世界で別の私が完璧に理解しているに違いない。知らんけど。そんなわけで、ごめんなさい評価不能です。
村山章 ★★★☆☆
インド映画なら「インターバル」と出るタイミングで終わったんで、正直、続きを観るまで判断は保留。しかし「スパイダーマンは大切な人を失うのが宿命」というお約束から派生するストーリーは「設定のための設定」の粋から出てないように感じる。でも絵と表現はすごい!と言いたいが、前作で線対称を崩したからこそ魅力的だったグウェンのキャラデザが「鼻筋が通った美少女」化していて、あのグウェンを返せ!と全心が叫んだ。
ひとことふたこと


眠気覚ましと尿意対策にもなり、お年寄りも喉に詰まらないような「コーヒー餅」の商品化はどうでしょうか。

その日観る映画に合わせて服を選ぶのですが、地味めな色ばかり着るので、『バービー』を観るときに着ていく服がない!と今から考えています。

東京で映画BARを開催しました。Podcastを聞いてくれている人がたくさん来てくれて嬉しくなりましたが、ちょっと恥ずかしい気持ちに。

109シネマズプレミアム新宿に初来訪。優雅な時間を過ごしつつ、1日に何本でも映画を観たい私の鑑賞スタイルとは相容れないと思ってしまいました。

しつこいようだが前作『スパイダーマン:スパイダーバース』のグウェンの作画が素晴らしいからみんな観てくれ!今回は美少女に美少女フィルターかけてんだよな。