2026年2月
映画好きの短評とイラスト
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▶ 今月のお題
・ ウォーフェア 戦地最前線
・ ヒグマ!!
・ ランニング・マン
・ トゥギャザー
ウォーフェア 戦地最前線
2025年/アメリカ/95分/PG12 1月16日公開
監督:アレックス・ガーランド、レイ・メンドーサ
出演:ディファラオ・ウン=ア=タイ、ウィル・ポールター
▶ 公式サイト
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2006年のイラクでアルカイダ幹部の掃討任務に就いた米軍特殊部隊がたどったカオスな顛末を、当事者たちの記憶から可能な限り再現。元ネイビーシールズ隊員で共同監督でもあるメンドーサの実体験をもとにした体験型戦場映画。さとうかずみ ★★★☆☆
榎本志津子 ★★★☆☆
戦争モノによくある、悲惨さや無益さを訴えるような物語要素ではなく、ただひたすら任務を遂行しようとする現場が映し出されることで、戦地に過剰な物語性を求めるのは観る側の勝手な期待であり、現実に戦う兵士にとっては「こなすべき仕事」でしかないのかも、と気づかされる。潜入時の緊迫感や、戦闘機の威嚇射撃の轟音、負傷兵の絶叫など、とにかく音響と迫力ある画面を体感せよ!系なので、これは4DXで乗りたかったな。
Taul ★★★☆☆
ビートルズの「She Came in Through the Bathroom Window」では、女性が浴室の窓から入り込むが、本作は兵士が家の壁を壊して侵入してくる。戦闘描写が凄まじい一方で、勝手に破壊を行い去っていく米国と、怨恨と武装化がさらに進みそうな被侵攻国を象徴するラストが雄弁だ。ただ、最後に元兵士を登場させる演出には困惑。製作者側の思いに寄り過ぎで、殺戮者が意気揚々と虐殺を再現する『アクト・オブ・キリング』を想起した。
touch ★★★★☆
劇場映えする一本。元ネイビーシールズ隊員の実体験に裏打ちされた実録モノだけあって、リアリティと迫力に圧倒される。前触れのない爆発、待てど来ない救援……この絶望感たるや。ほぼワンシチュエーションに絞った作劇は『シビル・ウォー』以上にソリッドで、逃げ場のない緊張が続く。疑似体験型の映画として戦地の恐怖を突きつける一方、そのスリルをライド・アトラクション的に消費している感触もあり、後ろめたさが残った。
マリオン ★★★★☆
記憶を忠実に映像化することで得られる戦場のリアルは、ネイビーシールズたちの勇ましさやヒロイックさを根こそぎ奪い去る。どんなに訓練を積んで最新の装備をそろえていても、一発の即席爆弾でパニックに陥り、ダメージを受けたら子どものように泣きわめく。そして、兵士たちがいなくなっても暴力の連鎖が続いていくであろうことが端的に示唆されている。戦争をエンタメ的な快楽で消費させない姿勢が貫かれていて素晴らしい。
村山章 ★★★★☆
「政治的にニュートラル」を極限まで追求すれば過去の戦争映画が到達しなかったリアルな戦場を描けるはず、という狙いは体感で95%くらい実現していて、元兵士である共同監督メンドーサの「俺たちの知ってる地獄を観てくれ!」というあけすけな自己開示も稀有な説得力に繋がっている。興味深いのは2人の監督の微妙なスタンスの差異が「政治的に自由」なんて不可能だと明らかにしていること。それが本作の二重の皮肉でもあるよな。
リン・ホブデイ ★★★☆☆
No frills 美化されがちの戦争映画に引き換え、この作品は実際に起こった一つの出来事に焦点を絞ってリアリティを追求。兵士たちの苦しみを共に体験する感覚。よって、音楽の演出もなければ、エンタテインメント感もない。辛くて2度と観たくないかもしれない。でもそれで良いでしょう。現代人は日々SNSで世界中の恐ろしい事件に触れながらも麻痺してしまう。強制的に皆が一回でも観た方が良いかもしれない。
ヒグマ!!
2025年/日本/100分 1月23日公開
監督:内藤瑛亮
出演:鈴木福、円井わん、宇梶剛士
▶ 公式サイト
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志望大学に合格した18歳の小山内は学費を稼ぐ必要に迫られ、闇バイトに手を出す。山中で裏切り者を殺害するよう強要され、さらには凶暴なヒグマに襲われるハメに……。『ミスミソウ』『毒娘』の内藤監督が贈るB級テイストあふれるアニマルパニックアクション。さとうかずみ ★★★☆☆
榎本志津子 ★★☆☆☆
日本国民の孫であり、甥っ子であり、遠い親戚、鈴木福。すっかり成長したのに、いつまでも「くん」付けで呼んでしまう、鈴木福。全国民がうっすら共同幻想として抱く好人物的イメージを損なわず、子どもの頃から見続けているからこそ、暗黙の了解で劇中でもキャラが確立していて、鈴木福×闇バイト×ヒグマというトンチキ設定でも不思議と観れてしまう。だって福くんよ⁉︎ と、鈴木福がゲシュタルト崩壊を起こす映画。
Taul ★★☆☆☆
ビートルズの「The Continuing Story of Bungalow Bill」では虎狩りを揶揄するが、本作はヒグマと弱者を食い物にする詐欺を重ね合わせ、その残酷さを描く。鈴木福くんのとぼけた味とグロ描写の組み合わせも悪くない。ただ、「動物ホラー」や「闇仕事」の映画は各国から面白いアイデアの作品が続々と生まれている中で、本作はあまりに展開が普通で、テンポも悪く、退屈な時間が多い。チープでもいい、目新しい何かで弾けてほしかった。
touch ★★★☆☆
モンスターパニックとしての狙いは理解できるが、人物設定があまりに中途半端。感情の積み重ねを描く前にヒグマ襲撃が差し込まれる単調な構図が繰り返され、アクションも冒頭がピークで以降は失速。ただ、特撮怪獣を思わせるヒグマの造形や鈴木福&円井わんの挑戦的キャスティングなど見どころも確かにある。熊被害多発で公開延期となっていたのは不運だが、図らずもジャンル映画として何を描くべきか問われた一本と言えるのでは。
マリオン ★★★☆☆
CG全盛の時代に敢えての着ぐるみ。まずは、そのクラフトマンシップを称えたい。グロいシーンも痛快で楽しかったし、鈴木福のコメディ演技も輝いている。そして、現実の貧困問題について考える間口の広さも用意されていて素晴らしい。闇バイトをやってしまう若者も命がけで山にこもるマタギのおっさんもみんな生活が苦しいのだ。ただ、全体的にミームまみれのネット空間のようなノリが多く、共感性羞恥を感じてしまったかな。
村山章 ★★☆☆☆
トンチキなクマパニック映画といえば最近では『コカイン・ベア』が真剣にフザケて茶化す姿勢が痛快でしたが、こちらは矛先を向ける先がボヤケて薄ぼんやりとしてしまった感。カネがない弱者たちがどれだけ右往左往しても圧倒的な力に為すすべもない現実の写し絵……なんだとは思うが、物語の着地が中途半端に小綺麗で行儀が良すぎるのよね。みうらじゅん原作、安齋肇監督のクマ映画『変態だ』はマジで破れかぶれで凄かったなあ。
リン・ホブデイ ★★☆☆☆
Grin and bear it 前知識もなく観に行ったら、「あれ?これは闇バイトの話だったのか?」と騙された気持ちに。(手に持っていたチケットを再確認した!)特に最初の数分はとてもシリアスだったので、その後の展開やトーンの違いに困惑。肝心な19(ジューク)の出番で大爆笑。でも哀愁が漂う着ぐるみで、臭そうな熱気は特に効果的。しかし『ランニング・マン』同様、お金は簡単に手に入らないな〜と実感。気をつけよう!
ランニング・マン
2025年/アメリカ/133分/PG12 1月30日公開
監督:エドガー・ライト
出演:グレン・パウエル、ジョシュ・ブローリン
▶ 公式サイト
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かつて『バトルランナー』の邦題で映画化されたスティーヴン・キングのSF小説を再映画化。超富裕層と圧倒的多数の貧困層に分断された近未来。職を失ったベンは娘の治療費を稼ぐため、1か月間ハンター集団に命を狙われる全世界中継のサバイバルゲームに参加する。さとうかずみ ★★☆☆☆
榎本志津子 ★★☆☆☆
スティーブン・キングが80年代に別名義で発表したSFを忠実に映画化。当時、キングによって「恐ろしくも現実とは違う近未来」として描かれた、貧富の差が激しく搾取が横行する世界は、今や世界中どこでもありふれているし、命がけ鬼ごっこも「逃走中」などでおなじみだし、2025年製作なのにすべてが古臭くて退屈。さらには「おっ死ぬ」など古語連発の字幕もあいまって、ちょっとしたレトロフューチャー感覚を味わえた。
Taul ★★★☆☆
ビートルズの「Run For Your Life(浮気娘)」は、浮気したら命懸けで逃げろ、と歌うが、本作はそんなレベルではない深刻さだ。先見性のあった80年代の原作のディストピア要素は面白いものの、現実となっていることも多い。それゆえ、SFなのに仕掛けは古く、背景は妙にリアルという奇妙なテイスト。終盤グダグダも、バレバレの変装や無駄な露出など、80年代アクションスターのようなグレン・パウエルの魅力で、何とか走り切った。
touch ★★☆☆☆
「【閲覧注意】逃走中を極限まで過激にしてみた」。80年代アクション風味の荒唐無稽さ。巨大メディアが支配するディストピアで、人類がコンテンツジャンキーになったピーキーな世界観を冷ややかに観た。分散型SNS隆盛の昨今、中央集権的な黒幕がすべてを牛耳る未来像はいささか想像しづらい。陰謀論ストリーマーを頼ったり面白がったりする展開、近作で度々見かけるけど、正直しゃれにならん。これを笑って受け止めるのは難しい。
マリオン ★★★☆☆
夢も格差もすべてがビッグサイズになってしまうアメリカのしんどいところが盛りだくさん。愛国心を煽る露悪的なエンタメが流行る世の中、嫌すぎる。でも、現実もそんなに状況は変わらないのが辛いところ。そりゃグレン・パウエルもファニーな笑顔を封印して、終始イライラしている「怒れる男」になっちゃいますよ。あと、テレビ局のロゴが「赤いN」になってるけど、もしかして某映像配信サービスのことを指してたりします?
村山章 ★★☆☆☆
原作未読。シュワルツネッガー版は考えても考えても観てんのか観てないのか思い出せない。てか、たぶん『トータル・リコール』や『ローラーボール』とごっちゃになってる。とにかく初見に近いフレッシュな気持ちで臨んだつもりだが、現実のディストピア感が暴走している昨今ではずいぶん古風なSFに見えてしまう。陰謀論者が巨大な権力に立ち向かう礎というのも、いまどき呑気なものだなあとフィクションとしての強度を疑う部分。
リン・ホブデイ ★★★☆☆
Run for your life 生活のために命をゲームに掛け、大金を狙う。「イカゲーム」の衝撃が記憶に新しい分『ランニング・マン』の世界観を古く感じる。それでも好きな俳優さんたちが出揃って、ニヤニヤした。グレン・パウエルはいつもよりアングリーな一面を見せ、ジョシュ・ブローリンは楽しげに悪役を徹底、コールマン・ドミンゴの司会役は最高だった。ただ2時間超えなくても良かったじゃないかしら?
トゥギャザー
2025年/アメリカ=オーストラリア/101分/PG12 2月6日公開
監督:マイケル・シャンクス
出演:デイヴ・フランコ、アリソン・ブリー
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倦怠期のカップルが、互いの身体が触れるとくっついて一体化しそうになる異常事態に陥るボディホラーにしてブラックコメディ。実生活でもパートナーのフランコとブリーが、主演だけでなくプロデューサーも務めている。さとうかずみ ★★★★☆
榎本志津子 ★★★★★
最高。まず、恋人同士のふたりともダメで、ずるくて自分勝手なところがすばらしい。どっちも嫌な奴だし、お互い依存しているのがわかるから、やがて肉体が溶けあい始めても「まあ仕方ないか……」と安心して観ていられる。人間の嫌な部分だけでなく、密着した肌を引き剥がしたり、切り離したり、引き抜いたり、痛い描写も満載で、これにはホラー好きもにっこり。時代を超えて海の向こうからやって来た、実写版人類補完計画。
Taul ★★★★☆
ビートルズの「You’ve Really Got a Hold on Me」は、きつく抱きしめてと歌うが、本作はそのまま身体がくっつき一体化していく。そんな悪夢を、惰性で一緒にいる倦怠期カップルで描くという意地の悪い面白さ。結婚のメタファーと捉えると、あの水は三々九度の御神酒で、鐘はウェディングベル。うまく合体できた彼らだが、もはや個人の自由はなく、うまくいかずに洞窟のカップルのような惨状になり苦しむ夫婦も多そう。怖い映画だ。
touch ★★★★☆
ラブラブなカップルが口にするような「離れたくないよ~」を、文字通りそのまま実現するとこうなるやで、それでもアンタらお望みか?という痛烈な皮肉。バウンダリーの侵食、共依存状態をボディホラーで物理的に可視化する試みが興味深い。実生活でもパートナー同士の俳優ペアが倦怠期カップルを演じるという当事者のリアリティに『アイズ・ワイド・シャット』も連想。ある意味、最高のデートムービーかもしれないですね、これは。
マリオン ★★★★☆
倦怠期カップルのぎこちなさをパーティーでさらけ出してしまう冒頭から居心地悪くて最高。そんなカップルが個人の意思とは関係なく「惹かれ合ってしまう」のが、恐ろしくも笑ってしまう。でも、伴侶との暮らしを選ぶって、独立していたふたりの人生を、まるでひとつの人生であるかのように振る舞うことでもあるわけで。パートナーと歩む人生って幸せだけど、ちょっと怖くない?みたいな感覚をホラーに落とし込んでいて見事だった。
村山章 ★★★★☆
正直オチとしては弱い……んだけど、一度設定した突拍子もないシチュエーションをどこまでディグるか勝負を、フルスロットルで走り抜けているのが本当に気持ちいい。例えば脚力で互いを引き剥がすときのスウェットの裾を伸ばして素足がくっつかないようにする可笑しさよ! 極限状態に陥った人間の知恵とバカバカしさが背中合わせでとても良い。あと主人公的でない人物像を掘り下げるアリソン・ブリーはいつも勇気に満ちている。
リン・ホブデイ ★★★★☆
Together Forever 英語で仲良しのカップルを「ヒップでくっ付いている」(joined at the hip)という表現があるけれど、このボディホラー映画は文字通り、それを具現化している。主役のカップルはギクシャクもするが、それでも引かれ合い「一緒になりたい」という想いが強い。思わず笑ってしまった最後のシーンの溶け合い具合を考えると「切っても切れない縁」ってこういうことね。

いつもレビューを上げるのがぎりぎりのわたし、今月は一番乗りでは!?と鼻息荒く〆切日早めの時間に書き込みに来たら、すでにTaulさんが入力済みでした。

ポール・マッカートニーのドキュメンタリー映画を観たが、あの前向きさは見習いたい。ビートルズをレビューに絡めています。
※今月の曲のプレイリストへのリンクはこちら↓

なかなかエクストリームな4本でした。ただ、イベントでの村山さんの言葉「いま、映画は分が悪い」に深く頷いたのも事実。ヘンテコな映画を素直に楽しめる世界を望みます。
友人たちと神戸を舞台に絵文字だけ使って全員集合を目指すというゲームをしました。土地勘のある場所にも関わらず、全員と合流できなくて悔しかったです。
映画に関わってきた人生で一番の大仕事と思われる、ハル・ハートリー新作『トゥ・ランド』の劇場公開に奮闘中。一連の上映が終わったらたぶん誇張ナシで燃えカスになる。
ハリウッドの停滞が著しく目立つ近頃、ホラー映画の大切さを改めて痛感。低予算でも新しいアイディアを生み出すジャンルなので、今後も楽しみ。
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