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▶ 今月のお題
・ ザ・ウォッチャーズ
・ クワイエット・プレイス:DAY 1
・ ルックバック
・ ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ
ザ・ウォッチャーズ
2024年/アメリカ/102分 6月21日公開
監督:イシャナ・ナイト・シャマラン
出演:ダコタ・ファニング、オルウェン・フエレ
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公式サイト
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奇妙な森に迷い込んだミナは、ガラス張りの建物に避難。そこには3人の先客がいて、彼らは“なにか”に監視されており、森から出ようとすると殺されると語る。M.ナイト・シャマランの実娘イシャナの長編監督デビュー作。
さとうかずみ ★★★★☆
榎本志津子 ★★★★☆
とにかく、考えたら負け。何度も一本背負いされる勢いで叩きつけられる展開を受け入れていくうちに、見えてくるものがある――いや、嘘。ないかもしんない。展開や設定や、謎についての種明かしが、こんなに後出しじゃんけん感があって破綻しているのに、がっかりどころかすがすがしい気持ちにさせられる。なによりも初長編作品にして、こんなにも無邪気に自分の世界を描き切って世界に叩きつけた監督、めちゃくちゃすごい。
奥浜レイラ ★★☆☆☆
夜は“鳥カゴ”に閉じ込められ、守られる。外の監視者の姿は中からは見えない。密室で与えられた娯楽は、現実に存在するのかも疑わしい陳腐なリアリティ・ショー。設けられたいくつかのルールは社会のメタファーか? いろいろな角度で風刺的要素を探っていたら、パパシャマランとは違うファンタジーの世界に辿り着く。わりと早めに出てきたクリーチャーが想像以上に凡庸で笑った。顔を見せないペットショップの店主が一番怖い。
Taul ★★☆☆☆
家業を継いだようなイシャナ監督。父親の悪い面も継承してるようだ。仕掛けで惹きつける感触が強いため、納得できないと強い不満になってしまう。本作は前半と後半の齟齬が気になるし、押し通すだけの愛嬌や力強さもなかった。ただ、父親の作品と言っても通るほどで、24歳でこのデビューは凄い。主人公のトラウマにまつわる描き方は胸に響いたし、意外と繊細なドラマもいけそうで、今後の独り立ちに期待。102分は少し長く感じた。
マリオン ★★★★☆
この父にしてこの娘あり。父シャマランの魅力であるアクの強い世界観や優しい後味がしっかり受け継がれていて、シャマラニストとしては嬉しくなる。そして、心身ともに囚われてしまった主人公と観察者の孤独な魂が共鳴するクライマックスは清濁併せ持つ人間の複雑さを見事に捉えていて感動的。監督自身に近い年代の女性主人公の物語を選んだことからも、これから父のような語り手になるぞ!という心意気が感じられてよかった。
村山章 ★★★★☆
M.ナイト・シャマランが作る映画はいつしか独自ルールが強固になり、“シャマラン映画”という一ジャンルとなった。ただ怪作『フォーガットン』を除けばシャマラン以外に撮る人間はいなかったのに、笑うしかないくらいシャマラン芸を受け継ぐ新人降臨!しかも娘! 隠喩を超えてくる怪異、堂々とベタな成長物語、カルト寸前の運命論。実直すぎる徒弟だが、繊細さや新味もあってジャンル拡張の可能性を見た。ビバ、シャマランズ!
貝リー・ビーバー ★★★☆☆
クワイエット・プレイス:DAY 1
2024年/アメリカ/100分 6月28日公開
監督:マイケル・サルノスキ
出演:ルピタ・ニョンゴ、ジョセフ・クイン
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公式サイト
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音を察知して襲ってくるモンスターの恐怖を描くパニックホラー第3弾。宇宙から飛来したモンスター群がマンハッタンに飛来。末期がん患者の詩人サミラは、阿鼻叫喚の地獄絵図の中、人生最後のピザを食べようとハーレムに向かう。
さとうかずみ ★★★★★
榎本志津子 ★★★★★
シリーズを通して、音につられてやってきては大暴れしてきたとんだお祭り野郎の怪物を、一種の災害的なものとして扱ったことで、対峙する人々の生き様が浮かび上がる。理不尽に命を脅かされ、恐ろしい目に遭っても、他人に敬意を払って助け合い、詩を、音楽を、猫を、ピザを食べる生活を愛するのが人間なんじゃないの? という人間こそが持ちうる知性や文化といった本質を「音を立てたら、即死」ルールに則って描いた傑作。
奥浜レイラ ★★★★☆
本シリーズに惹かれるのは、圧倒的な他者性とどう付き合うか示されるから。他人も赤ちゃんもこちらに都合よく黙らせるのは無理だし、猫はその最たるもので愛玩動物の中でも特に簡単ではない(だから愛している)。今作で終末医療を受ける主人公は、相棒の猫はもちろん自分の肉体だって思うままにできない。乗っ取られそうな身体で今日1枚のピザを食べることを選ぶ。人間の尊厳を具現化したような黄色のカーディガンが誇らしかった。
Taul ★★★☆☆
自分の意志を貫き通した主人公の姿に心打たれた。ラストに流れるニーナ・シモンの歌声が、彼女の最後の、でもやり遂げて迎えた1日を讃えるかのようだ。自分の周りの突然去った知人や動けない高齢者からすると、幸せだったようにさえ思える。主人公にとってのピザは自分だったら何だろうか、忘れぬよう過ごさなければ、とも思う。残念なのが中盤で、怪物によるサスペンスが予想の範囲内だし繰り返しも多く、100分でも少しダレた。
マリオン ★★★★☆
よくあるパニックムービーかと思いきや、人間の尊厳と気高さについて描いた上質なドラマが展開されていて驚かされる。世界の終わりを迎えたニューヨークをさまようのは、介助猫を引き連れた余命わずかな女性と生きる希望を失いつつある男性。「音を立てたら、即死」という状況下において、ふたりと一匹の存在はあまりにもか弱い。それでもほんの少しの誇りと矜持を胸に過酷な世界を人間らしく歩み続ける姿に涙が止まらなかった。
村山章 ★★★★☆
エピソード1的な前日譚になると思わせた予告編はとんだミスリード! 映し出されたのは末期がん女性の終活物語。確かに本シリーズに関しては聴覚だけで襲ってくる怪物はあくまでも背景でよく、ことの起こりとか正体とか狙いとか、組織的抵抗みたいな話はどうでもいいかも。思えば「1」の面白さも一家族の出産話だったし、シリーズのフォーマットを切実な個人の物語を載せる乗り物として扱ったのは英断。この調子でもっとやって。
貝リー・ビーバー ★★☆☆☆
ルックバック
2024年/日本/58分 6月28日公開
監督:押山清高
出演:河合優実、吉田美月喜
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藤本タツキが2021年に発表した読み切りマンガをアニメーターの押山清高がアニメ映画化。マンガを描くことに没頭する少女と、卓越した画力を持った引きこもりの同級生の出会いと別れを、現実と非現実を交錯させながら描き出す。
さとうかずみ ★★☆☆☆
榎本志津子 ★★★☆☆
原作が持つ、突き放したような独特のドライ感がキャラが動き肉声を得たことで薄まり、情感が伝わりやすくなった。が、そんなことはどうでもいい。特筆すべきは圧倒的に美しく胸を打つ背景美術。次第に色を変えていく広大な空、しんとした京本の家の廊下に伸びる淡い光、陸橋を行く単線の電車、雪解けのアスファルト……とくに土砂降りの中、あぜ道で感情を爆発させた藤野が踊るように駆けていく、あのシーンが最高 of 最高。
奥浜レイラ ★★★★☆
原作から繋がる「創作に身を捧げる者の地道な鍛錬を見ている人は必ずいる」というエールが、haruka nakamuraの劇伴によってもブーストされる。エンドロールで主人公の背中を見守る主題歌のメロディの一部が別の楽曲に組み込まれ、中盤のある転換点となるシーンで流れることで「あなたの頑張りはいつか正当に評価される」という作品を貫くテーマが強固になり、自分ごととして流れ込んできた。私は誰かに誉められたがっているのかもしれない。
Taul ★★★☆☆
美しい映像や役者の声で見やすくなり、涙するシーンもあった。ただ、原作漫画にそこまでノレなかった理由も分かった。藤本の自己肯定感を請け負う京本のキャラや、実際の悲惨な事件を借りた展開は、エゴイスティックだしグロテスクだと思えてしまう。そういった感情がむき出しの表現であっても、受け止めて感動できる作品だと分かりつつ、自分はもっと昇華されたものの方が好み。年齢もあるが昔からそう。58分での完成度は高い。
マリオン ★★☆☆☆
原作を読んだときの衝撃は今でも覚えている。あの事件をこうも軽やかに昇華してみせるなんて。一方で、簡単に折り合いをつけさせないでくれよとも思った。それぐらい情緒をかき乱された漫画を見事に映像化したと思うが、コマとコマの間にある余白が埋められていくような感覚に陥る。特に、劇伴は感動してくれと言わんばかりに主張が激しい。割り切れないからこそ胸を打つ物語で、こんな単純な味付けの演出は見たくなかった。
村山章 ★★☆☆☆
マンガと映像は本質的に異なる。マンガは自分のペースでコマを追い、ページをめくる(もしくはスワイプする)。映像は一方向の時間軸で一分一秒一コマごとに先へと進む。原作愛やアニメとしての緻密さ丹念さ質の高さは疑うべくもないが、細部を何度も見返すことで作品を探求する原作の奥行きは、性急なテンポと感傷的な音楽によって一義的に狭められたと思う。いっそ原作のコマ割り全無視くらいの冒険があっていいのではないか。
貝リー・ビーバー ★☆☆☆☆
ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ
2023年/スペイン、フランス/31分 7月12日公開
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:イーサン・ホーク、ペドロ・パスカル
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スペインの奇才アルモドバルが、ファッションブランドのサンローランとコラボした短編西部劇。保安官ジェイクのもとに旧友のシルバが訪ねてくる。かつて愛し合った2人の想いは再燃するが、シルバには大きな目的があった。
さとうかずみ ★★★★☆
榎本志津子 ★★★☆☆
ふたりのおっさんの、人生の切れ端を垣間見る31分。たったこれだけの中で、かつての恋の熱と、会えなかった25年の歳月と、つのらせたお互いの感情がたしかに伝わってくる。映画を構成する印象深い映像は断片的で、彼らの生きてきた時間のうちの一瞬でしかなく、触れ合った他人の人生なんてまさに断片のようなものだよね、と思ったけど、あのワイン蔵の場面はむしろ、うたた寝したときに見る不可解な夢みたいだったなー。
奥浜レイラ ★★★☆☆
西部劇の世界から“ほとんどないこと”にされてきた中年の男性同性愛者が主人公。『ブロークバック・マウンテン』は羊飼いの話だった。イーサン・ホークは保安官、ペドロ・パスカルとともに元ガンマンだったらしいことが分かってくるとアルモドバルがこのジャンルを更新しようという意思が伝わってくる。とはいえ鼻息の荒さは感じず、スクリーンには徹底された美意識が漂う。たった31分。でも充分な見応え。イーサンの声で酔った。
Taul ★★★☆☆
サンローランの衣装を活かしたアルモドバルらしい鮮やかさで、西部劇なのに色香漂う絵面が楽しい。その中でのイケオジの仕上がり具合に見惚れる。イーサンの枯れた困り顔の皺と甘さを残す体つき。ペドロの悲しげな目を持つジャガイモのような太マッチョな味わい。やはり役者の顔とガタイは映画の肝。ずっと見ていたかった。中身はわりと単調で、せっかくの短編企画なので遊び心がもっと欲しい。良くも悪くも物足りない31分。
マリオン ★★★★☆
かつて情熱的な関係だった男たち。時は経ち、ふたりは再び引き裂かれようとしている。しかし、運命は彼らを見放さなかった。ふたりがたどり着いた境地は殺伐とした西部開拓時代の中で尊いものとして映る。イーサン・ホークとペドロ・パスカルの色気にうっとりしつつ、味わい深いラストを噛みしめる濃厚な31分だった。あと、女性そっちのけで熱いキスを交わす展開は『チャレンジャーズ』を思い出して少しニヤニヤした。
村山章 ★★★★★
アルモドバルは初の英語映画でもアメリカ伝統芸である西部劇でも清々しいほどブレない。官能、と呼ぶにはド直球ないつもの尻を追うカメラ、ところでこの場面何なんですっけ?な脱線、そして愛憎の先にあるもう結末なのかもよくわからん斜め上の幕切れ。戸惑い必至の要素もアルモドバルの美学でつなぎ合わせると確かに人生ってこれくらい不条理で厄介で面白いよねってなる。魔術なのかペテンなのか、とにかく魅力的なんで降参。
貝リー・ビーバー ★★★★★

とつぜん大昔に遊んでいたゲームボーイやPSPのソフトを売ろうと思い立ち、見積もりに出してみた。いくらになるかわからない今がいちばん楽しいね、うひひ。
この度はお邪魔いたします。自分のスケジュール管理不足により苗場の山でこれを書きながら、テントの海を眺めています。色は圧倒的にベージュが多いです。

『ルックバック』で思い出したけど、小中学生の頃は漫画を書いてて学級新聞にもよく載って、それで人気ものだった。今や幼児並みの画力ですが。
暑さに耐えきれず、ついついセブンイレブンでいちご練乳氷を買ってしまう。この夏は君と一緒に乗り切ることにするよ。
どこに載るか把握できてないんですが地方新聞でバリ島にまつわるマニアックな連載やってます。見かけたら読んでもらえると嬉しいです。とりあえず日本海新聞と下野新聞。

STRANGER THINGSのアレクセイみたいな眼鏡を求め、大井競馬場で見知らぬおじさんから買った運命の一品。ウキウキで掛けたらクラクラ。どうやら本気の老眼鏡だった模様です。
メールアドレスの登録で最新号が届きます。次号のお題は『墓泥棒と失われた女神』『HOW TO HAVE SEX』『インサイド・ヘッド2』『ツイスターズ』を予定!