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▶ 今月のお題
・ オリオンと暗闇
・ サンコースト
・ 俺らのマブダチ リッキー・スタニッキー
・ シティーハンター
オリオンと暗闇
2024年/アメリカ 2月2日配信(Netflix)
監督:ショーン・シャルマッツ
出演:ジェイコブ・トレンブレイ、ポール・ウォルター・ハウザー
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公式サイト
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絵本「オリオンとクラヤーミ」をドリームワークスが映画化。臆病でなにごともネガティブにとらえてしまうオリオンは、小学生になっても暗闇が怖い。ある晩“暗闇”を名乗る黒い怪物が現れ、夜の魅力を伝えるべくオリオンを外の世界に連れ出す。
さとうかずみ ★★★★☆
榎本志津子 ★★★☆☆
世界中の昼が夜に、夜が昼に変わっていく様子や、夜の街や森や海の美しさ、ノートの落書きが動き出すさまなど、とにかくアニメーションがすばらしい。血がつながっていても親と子で考えることは違うから、それぞれが語り足していく「暗闇」をめぐる物語はどんどん広がりを見せていく。決して派手さはないけれど、親子が年や経験の差に関係なく、相手の気持ちや考えを尊重して語り合う時間のやさしさがめちゃくちゃ沁みた。
kaoLi ★★★☆☆
娘(7)曰く、国語の時間に発表するときはどきどきするし、暗闇はどうしたって苦手。目を閉じて眠りに入るときも物凄く怖く、夜にお母さんがどこか出かけて家に居ないのはとても嫌なんやって。監督が届けたい人は、いま暗闇が怖くてたまらない子どもたちと、昔暗闇が怖かったかつての子どもたち。そんな私たちに、心配しないで。大丈夫だよ。と優しく背中を押してくれる。監督が、逃げずに真っ直ぐ作ってくれたことにただ感謝。
Taul ★★★☆☆
怖がりの少年を概念キャラが勇気づける話で、設定も絵面もどこかで見たなあと観ていると、突如、世界が変わるメタ視点が現れてびっくり。相互に関わりあって進むと、さらに別の視点が登場し、ぐるっと回ってウルトラCの見事な着地を迎える。さすがC・カウフマン、縦横無尽な作劇。大人にはその複雑さが見ごたえになり、子どもには楽しい奇跡として受け入れられるのではないだろうか。自由な発想で世代を繋ぐ素敵な物語だった。
マリオン ★★★★☆
かつては僕もオリオン君のように臆病で泣き虫な少年だった。でも、今となってはなぜあんなに怯えていたのかまるで思い出せない。きっと起こりもしないようなことをいろいろ想像していたんだろうなぁと今作を見ながら思ったのだが、それは劇中で語られるおとぎ話が世代を超えて繋がっていくときの感覚と似ている気がする。自由な発想や想像力が子どもだった自分と大人になった自分を繋げてくれる。物語の力ってやっぱりすごい。
村山章 ★★★★☆
児童向け絵本を奇才中の奇才C・カウフマンが脚本化? 想像もつかない組み合わせだと思ったら、冒頭から不安神経症の少年の妄想が暴走したり、理不尽なスクールカーストに苦しめられたり、概念としての“暗闇”が底なしの孤独にとらわれたりとみごとなまでのカウフマン節。『かいじゅうたちのいるところ』にも似た切なさを醸しつつ、ただの教訓話になるものかとデタラメにハッチャける。シンプルな原作からのねじれた飛躍に拍手!
りょういち ★★★☆☆
サンコースト
2024年/アメリカ 2月9日配信(Disney+)
監督:ローラ・チン
出演:ニコ・パーカー、ローラ・リニー
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脚本家のローラ・チンが自らの生い立ちから着想を広げた監督デビュー作。難病で植物状態の兄が緩和ケアのホスピスに入所。介護から解放された女子高生のドリスは人並みの青春を謳歌しようとするが、兄を溺愛する母親との関係はこじれるばかりで……。
さとうかずみ ★★★★★
榎本志津子 ★★★★★
重い。あまりにも重すぎる境遇のティーンエイジャーの物語だよこれは……。でも、人生なんてそんなもんで、ヒステリックな母親や、ホスピスで死を待つ寝たきりの兄がいても、学校の友達とはパーティや恋バナで空疎に盛り上がるし、大切なものはみんな違うし、そんな風に毎日は続いていく。淡々とした複雑かつリアルな人物描写にヒリヒリする中、ひとりだけちょっとリアルさを欠いた妖精みたいな存在のポールが癒しだった。
kaoLi ★★★★☆
ポスターを見てふと思った。主人公ドリスはどことなく菩薩顔やなぁ、と。兄の介護にかまける親に、青春を搾取されていることにすら気づいていないドリスの姿に、泣けて泣けて仕方がなかった。子どもが子どもでいられない環境ってなんやねん。お悔やみの言葉すら言えない子が普通なんだよ。母親がドリスの心を、人生を、簡単に踏み躙る姿を見ていて腹が立って仕方なかった。それでもドリスは菩薩がすぎたし、人生は流れていた。
Taul ★★★★☆
主人公のヘビーな状況を声高に訴えるのではなく、彼女が青春時代の身近で普通の出来事を大切にする日々で、ゆっくりと、でも確かな感触で、乗り越えていくさまを自然体で描く。延命の問題、母親の本意、悪友らの親切さを、仰々しく語らないのが心地よい。ウディ・ハレルソンさえ控えめで、見終わった時は物足りなさもあったが、思い返すに主人公と母親のガタピシ言いながらも進んでいく姿が愛おしく、心に残る作品になった。
マリオン ★★★★☆
娘のことをおざなりにしてしまうほど脳死状態の兄を気にかける母と、兄のせいで経験できなかった普通の青春を謳歌しようとする娘。そんなふたりの葛藤や不安に涙ぐんでしまう。永遠の別れと向き合うのは辛い。どうしたって後悔が残ってしまう。だからこそ、目の前にいる人のことがより大切になる。安楽死やヤングケアラーといった社会的テーマに目を向けつつ、残された人々の等身大な感情に寄り添ってくれる優しい映画だった。
村山章 ★★★★★
尊厳死、毒親、ネグレクト、ヤングケアラー、介護に肉親の死などなど。どれひとつとってもおいそれとは扱えない題材のはずなのに、すべてが世界を構成する要素として絶妙な塩梅で配置され、うっかりしてると「いい青春ドラマだったね!」なんて感想に落ち着きかねない。デリケートな物語を軽快な手つきで捌きつつ、映画のウソに逃げずに現実にも向き合った傑作。特に問題ありありな大人たちを見捨てない優しさは途方もないよ。
りょういち ★★★★☆
俺らのマブダチ リッキー・スタニッキー
2024年/アメリカ 3月7日配信(Prime Video)
監督:ピーター・ファレリー
出演:ザック・エフロン、ジョン・シナ
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どんな悪ふざけも架空の親友リッキーのせいにして難を逃れてきた悪ガキ3人組。しかし大人になって長年積み重ねたウソがバレそうになり、偽のリッキーを雇うことに……。『グリーンブック』の監督が贈るヒューマンコメディ。
さとうかずみ ★★★★☆
榎本志津子 ★★★★★
これを観た後で、ジョン・シナのこと好きにならない人なんているゥ? 物語のバカとシリアスの塩梅も、俳優陣の魅力も、尺も、すべてがちょうどいい。幼なじみバカ三人衆がやらかした悪行をぜんぶなすりつける便利な架空の親友「リッキー・スタニッキー」が、ウソを超えて受肉し、実在していく様子はちょっと感動する。なによりジョン・シナのひとりコスプレ大会(DEVO!初期ブリちゃん!)だけでも一見の価値アリ。最高!
kaoLi ★★★☆☆
喜怒哀楽がキュッと詰まった、貰うと嬉しい季節のギフトみたいな作品。瞳孔常時フルオープンなジョン・シナサイコー!元祖キラキラ代表ザック・エフロンが、憂いをおびててサイコー!昭和感漂う下ネタ満載なのがサイコー!人は、環境なんじゃね?人生はやり直しきくんじゃね?ってメッセージ超サイコー!嘘が現実を侵食していく怖さをポップに描きつつ、3バカにしっかりと大人の階段登らせた監督の手腕はやっぱり最高!あー楽しかった!
Taul ★★★☆☆
ピーター・ファレリーはハートフルな『グリーンブック』が高く評価されたが、本作では冒頭からクソガキたちが好き放題。悪ノリコメディに戻っていて嬉しかったし、面白かった。語り口が巧みで、間抜けな企みで笑わせながら、嘘もやりきれば本物になるという実にアメリカンな話を仕立てあげる。ジョン・シナの社会不適合な味わいがマブダチ役にピッタリ。物真似が可笑しくて女装はブリトニー・スピアーズ?あのショーは全編見たい。
マリオン ★★★☆☆
いやぁ笑った笑った。責任逃れの悪知恵ばかり働く仲良し3人組が自分たちがついてきた嘘に翻弄されていく様がとにかくおかしい。しかも、嘘のために用意した売れない俳優があれよあれよと自分たちの人生に侵食してくるではないか。劇中のような大騒動はそうそうないけど、些細な嘘がややこしい事態に発展してしまうのは結構あるあるな話だと思った。あと、アカデミー賞のときにも思ったけど、ジョン・シナのコメディ映えがすごい。
村山章 ★★★☆☆
昔のファレリー作品のようなラジカルさは望めないが、今の時代の下ネタの際々に攻め込む本気は伝わるし、根底に温かいハートがあるのも相変らず。個人的には「誰だってやり直せる!」という物語だけに、やらかしセレブのウィリアム・H・メイシーの起用や、巡業中にトンズラした元レスラーのネイサン・ジョーンズをジョン・シナと共演させていることにジワる。禊のつもりかメイシーは下ネタ担当としてエンドクレジットまで大活躍!
りょういち ★★★★☆
シティーハンター
2024年/日本 4月25日配信(Netflix)
監督:佐藤祐市
出演:鈴木亮平、森田望智、安藤政信
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北条司の人気コミックが日本で初めて実写映画化。新宿を根城にするスイーパー(始末屋)の冴羽獠と、後に相棒となる槇村香の出会いを描く。とある美女から人探しを頼まれた獠。しかし謎の組織に相棒の槇村が殺されてしまう。槇村の妹、香は獠に兄の復讐を依頼する。
さとうかずみ ★☆☆☆☆
榎本志津子 ★★☆☆☆
原作もアニメもジャッキーもゴクミもラショーも上川隆也もなにひとつ見たことがなく、冴羽獠がもっこりもっこり言いながら香って女にデカいハンマーで追いかけられる話、くらいの認識で鑑賞。結果、だいたい合ってた。今作も鈴木亮平の全力っぷりには素直に感心したけど、それ以外で惹きつけられるものはとくになく……当時、原作ガチファンだった友人はどう思うのか、久々に話を聞きたくなりました。最近どう?元気?
kaoLi ★★☆☆☆
めちゃくちゃ冴羽獠(さえばりょう)がおる! その時点でもうこの作品に夢中になってしまった。おる、確かにおる。ちゃんと槇村がおる。獠が香と掛け合いしてる!ゲッワイェンダーが流れてる!駅の伝言板にXYZ!?今の人わかるの?と思いつつ、映画に全く出てこないエピソードを、脳内補完しながら鑑賞……してしまったせいで気づくのがおそくなった。そう、肝心の話自体はどうでもいい感じだったのよな。しょぼん。ルックは最高☆
Taul ★★☆☆☆
鈴木亮平が冴羽獠になりきっていて魅力的だった。ただ、舞台を現代にした割には、下ネタを見やすくする程度で、やってることや世界観は昔のまま。時代性に乏しく、今やる意義を感じなかった。よしんば見た目は同じでも、何かしら現代的なテーマを入れ、アップデートしようとする意志を見たかった。今の日本で海外からの需要に対して、過去の遺産の「ガワ」だけ利用して適当に商売しているものを見かけるが、本作もその類に思えた。
マリオン ★★★☆☆
原作未読のまま鑑賞したが、実写化するにあたって絶妙なチューニングが施されているのが伝わってくる。原作の設定や荒唐無稽さを残しつつもケレン味のあるアクションと編集でかっこよく魅せ、反感を買いそうなスケベギャグも不愉快な気分にならないラインまで調整。ビギンズストーリーにしたことで1本の映画としての収まりもいい。そして、完璧に仕上がっている鈴木亮平の存在感よ。製作陣の見事な脚色力に支えられた良作。
村山章 ★☆☆☆☆
世間が原作&アニメ版の大ファンだという鈴木亮平の本気を称賛したくなる気持ちはわかる。が、脚本と演出は実写映画として「本気でこのレベルでいいと思いました?」と詰問したくなるクオリティ。涙ぐましい情熱をもってしても泥舟は泥舟でしかなくて哀しい。ファンへの贈り物であるはずの「Get Wild」が新録バージョンで、疾走感よりも衰えばかり感じてしまうのも辛い。思えばF・ラショーのフランス版は奇跡だったな。
りょういち ★★☆☆☆

りょういちさんちのワンちゃんがかわいすぎて即ファンになり会わせてもらいに行ったり、かつての同僚で集まって日帰り小旅行をしたり、仕事を辞めたりしました。

カリール・ジブランの詩の一節「子どもの魂は明日の家に住んでいて、あなたは夢のなかにでも、そこには立ち入れないのです」を再確認。更に身を引き締めて、子育て頑張るぞ。

『オッペンハイマー』の35㎜フィルム上映を見に広島の映画館「八丁座」さんへ。和のテイストの統一感、ゆったりソファー、前説ありと、一気にファンになりました。
コーヒーとワインが楽しめる変わった美容院が家の近くにあることを最近知りました。引っ越して2年経つのに近所のことを何も知らない…。
一足早く観た『ナミビアの砂漠』がとんでもない映画で山中瑶子おそるべしと思ってたらカンヌで賞獲ってた。サスガというべきか当然というべきか。

大きな声では言えなかったんですが、リッキー・スタニッキー冒頭で犬の生殖器を赤ペンで模した事に一番感動(感心)したかもしれません。天才かな。色んな映画見れて楽しかったです。
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