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マッシブ・タレント ↗
2022年/アメリカ 3月24日公開
監督:トム・ゴーミカン
出演:ニコラス・ケイジ、ペドロ・パスカル
ニコラス・ケイジが自身をモデルにした映画スターを演じるアクションコメディ。多額の借金を抱える俳優ニック・ケイジは100万ドルというオファーを受け、スペインの大富豪ハビの誕生日パーティに参加する。自分の大ファンであるハビと意気投合するも、CIAと犯罪組織を交えた騒動に巻きこまれる。
さとうかずみ ★★★☆☆
Taul ★★★☆☆
ニコラス・ケイジ本人によるニコラス・ケイジいじりが笑える。ひょんなことでのスパイ活動で「扮する」のも役者ネタで可笑しい。映画を通じて絆を深めるバディ感がもっと胸熱に描かれていたら、より締まったように思う。この作品が楽しめたのは、ケイジの状況が公私ともに好転しているのを耳にしていたから。実際旬のペドロ・パスカルに引けをとらない現役スター感もあった。ほんとの大復活作も近いと期待。
まな ★★★☆☆
「ニコラス・ケイジ」をたくさん言いたいだけの宣伝や自分で自分をメタ的にネタにしまくる感じには少々飽きがきたが、俳優としての経験を活かした大活躍っぷりやペドロ・パスカルとの素直な友情は楽しい。ただその素直さ、健全さがエッジのなさにもつながっているような気もする。さまざまな固有名詞が飛び交う中で「デュプラス兄弟」に爆笑。あと”あの映画”は傑作だというのが映画好きの真理、みたいな潮流はやめてほしい。
マリオン ★★★★★
キャリアの伸び悩みや家庭の不和、理想と現実とのギャップに悩む男たちが、慰め合いながらありのままを認めて良き人であろうとする姿が素敵だった。露悪的に振る舞うといった男らしさマウントが無くなればいいと思っている自分にとって、理想的な関係性を描いてくれていて嬉しくなったし、彼らの優しい団結と絆が愛おしくてたまらない。もちろん、ニコラス・ケイジによるセルフパロディ的な演技と自虐ネタも最高だった。
みえ ★★★★★
ニコラス・ケイジの代表作と言えばこの1本でしょ!てなことを、映画館を出た後に誰かと言い合いたくなる、ニコラス・ケイジづくしの作品だった。本人ネタが散りばめられ、過去の出演作を知っていればいるほど面白い。でも、知らなくても面白い話になっているからすごい。大ファンらしき富豪は、ただの大ファンか裏社会の大悪党か、と最後まで惑わされる。ちょっと行き過ぎた映画への情熱から生まれる滑稽さが、最高だった。
村山章 ★★★☆☆
ニコケイファンの監督がケイジの映画人生を総括するような企画で、『ワイルド・アット・ハート』的ケイジをオルターエゴに据えたり、粗製濫造に見える近年でも『マンデイ 怒りのロード・ウォリアー』を評価していたり、ファン心をくすぐる作品になっている。ただメジャー大作に出てるときも常にどこかしらハミ出していたのがケイジなので、もっと破天荒に破綻してくれていたらまさにニコケイの権化のような映画になれたかも。
ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り ↗
2023年/アメリカ 3月31日公開
監督:ジョナサン・ゴールドスタイン、ジョン・フランシス・デイリー
出演:クリス・パイン、ミシェル・ロドリゲス、ヒュー・グラント
テーブルトークRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」を映画化したアクションファンタジー。盗賊のエドガンは相棒の戦士ホルガと共に娘を取り戻す冒険の旅に出る。ユニークな仲間を集めて数々の難関をクリア。ついには邪悪な権力者と対峙する。
さとうかずみ ★★★☆☆
Taul ★★★★☆
冒険ファンタジーがこんなに楽しかったのはいつ以来だろう。CGだけでなくプラクティカルエフェクトによる手作り感溢れるモンスターや、テーマパークのようなセットで魔法の世界を仕立て上げる。困難と思える障害もアイデアとチーム力でクリアして、どんどん話を進めていく。元のテーブルトークRPGのコンセプトを受け継いでるのではないだろうか。作る側、見る側両方の「想像力」を信じてる感じがして心地よかった。
まな ★★☆☆☆
学園ドラマでD&Dのゲームで遊ぶ少年を演じていたジョン・フランシス・デイリーが大人になってその映画化を手がけたという事実に胸がいっぱい。しかし好みの軽いノリで始まりワクワクはするものの一向にジョークが刺さらない。親の役割を持つ者同士がカップルではない新しい家族像を示すのはいいが、その前に"冷蔵庫の女"ではないか。レゲ=ジャン・ペイジの"話はつまらないがめちゃ強い"キャラをもっと出してほしかった。
マリオン ★★★★☆
プレイヤーの自由さと想像力によってどこまでも広がっていくテーブルトークRPGの魅力を、映画として成立させていて素晴らしい。行き当たりばったりながらも試行錯誤していく過程や王道から外れたキャラクターたちの軽妙なやり取りは、ゲームをプレイしているときの感覚を見事にトレースしていた。あと、ソフィア・リリス演じるドリックのビジュアルが個人的に刺さりすぎる。エルフ的なモチーフのヒロイン、好きなのよね…。
みえ ★★☆☆☆
魔法使いや怪獣が登場して悪い奴と戦って、宝物を取り戻す冒険の道中ではアクションがいっぱい。笑えそうな要素も散りばめる。面白くなりそうなものなのに、どうも単調に思えてしまった。その原因は、登場人物に愛すべき欠点や性格のゆがみのようなものが乏しかったからじゃないか。調子よく悪だくみして仲間を裏切るヒュー・グラントだけは、底の浅い悪党っぷりがチャーミングで、観ていて楽しかった。
村山章 ★★★☆☆
観客をしんどくさせない、いい湯加減なトーンが本作の魅力であることに異論はない。ただウェルメイドだと称賛する向きには疑問があって、ウェルメイドは面白すぎないことへのエクスキューズではない。ドラゴンのブサカワ描写とヒュー・グラントの小悪党キャラは超キュートだし、ジェンダーロールの反転など意欲的な配慮も感じるが、クリシェに頼りすぎでさすがにもっと新鮮な驚きがほしい。物足りないんですけど、強欲すぎます?
ガール・ピクチャー ↗
2022年/フィンランド 4月7日公開
監督:アッリ・ハーパサロ
出演:アーム・ミロノフ、エレオノーラ・カウハネン、リンネア・レイノ
第38回サンダンス映画祭ワールドシネマドラマ部門観客賞を受賞したフィンランド初のジェンダークィアな青春映画。女の子同士で恋に落ちたり、未知の性を冒険したりするZ世代の3人の少女。自分らしさに正直に、ぶつかり、悩み、寄り添う彼女たちを3度の金曜日を通して描く。
さとうかずみ ★★★☆☆
Taul ★★★☆☆
よくあるタイプのガールズムービーだと思ったが実にうまいつくり。レズビアンカップルのやりとりや、アセクシュアルさの様子が自然に受け取れるように、周囲との衝突を持ち込まず、三者三様の揺れ動く心情だけを描いてる。スタンダードサイズという狭い画面で、半径2m内にフォーカスを当ててるような撮り方もぴったり。親や学校、男たちは背景になる。余計なものは映り込んで欲しくない、そんな大切な写真のような映画だった。
まな ★★★☆☆
属性が障害になるのではなく、家族との関係やスポーツとの向き合い方に悩み、それが恋愛に影響するミンミとエマのカップル。対して性的快楽の探求の途中なのか、アセクシャルスペクトラムの線上にある自身のアイデンティティの模索なのかいまいち描写のはっきりしないロンコ。はっきりしない人をそのまま描くことも必要かもしれないが、創作としては一歩先まで示しても良かったのではと思う。3人の個性をもっと知りたかった。
マリオン ★★★☆☆
家族との関係性や恋愛、周囲から期待されるプレッシャーに揺れる3人の少女たち。失敗や喧嘩もたくさんしながら、イキイキと自分たちの生きる道を見つけていく姿が瑞々しい。また、彼女たちのセクシュアリティがもはや当たり前のものであり、思い悩む要素ではないものとして描かれているのも、今を生きる若者のリアルな感覚を捉えていてよかった。それにしてもレーザー光線銃を使ったサバゲー楽しそうだったな…めっちゃやりたい。
みえ ★★★☆☆
性格も家庭環境もさまざまな少女たちが、恋愛を中心とした人間関係に思い悩む。恋愛感情には異性愛も同性愛も違和感なく存在し、恋愛か友愛か性愛かもよくわからないまま同列に存在する感じが、良かった。自分自身の感情をつかみきれない十代の少女たちの心の揺らぎと、それが表出したときの行動や苛立ちを、たくさんの形で見せてくれる。誰もがどこかに自分のかけらを見出せそうなこの作品、若い頃に観たかった。
村山章 ★★★☆☆
昔、父親を『桐島、部活やめるってよ』に連れて行ったら、「ただの高校生が出てくるだけやないか」と言われた。確かにその通りだけど、そうじゃないんだよ、そこには高校生なりのすべてが詰まってんだよ、と言いたくなったが、あれから10年が経ち、自分も似た距離感になっていて愕然。ティーン女子たちが生きる瞬間瞬間を凝縮した3日間を眺めながら、ただ他人事として見つめている自分がいて、まあそれも人生って感じがする。
ノック 終末の訪問者 ↗
2023年/アメリカ 4月7日公開
監督:M・ナイト・シャマラン
出演:デイブ・バウティスタ、ジョナサン・グロフ、ベン・オルドリッジ
山小屋で休暇を過ごしていたゲイカップルのアンドリューとエリックと養女のウェン。武装した謎の男女4人組に囚われてしまい、家族の誰かひとりの犠牲か、世界の終焉かの選択を迫られる。ポール・トレンブレイの小説『終末の訪問者』をM・ナイト・シャマランが映画化したスリラ―。
さとうかずみ ★★★★☆
Taul ★★☆☆☆
終末論を元にした寓話をド直球に描くシャマラン。設定を活かした語り口や、恐怖を煽る演出はさすがだ。ただその上手さが冴える分、拍子抜けした感じで終わる。武装集団が操る陰謀説や、何の問題もないゲイ家族の試練に、カルトやホモフォビアの擁護と取られかねない迂闊ささえ感じた。シャマラン一流の問い掛けだと思うし、自分の想像力が足りないだけかも知れないが、もう少し面白がれるメッセージか捻りが欲しかった。
まな ★☆☆☆☆
陰謀論者を批判したいのかさまざまな警鐘に耳を貸さない人類を批判したいのか何なのか、申し訳ないけど私にはシャマランの言いたいことがわからない。ドラマ『サーヴァント』と違い、そういうの置いといてとにかく不気味で奇妙で悲しくて面白い、とも思えなかった。ゲイカップルをメインに配したのは原作小説だそうだが、彼らを酷い目に合わせることでどんなメッセージを発することになるかはあまり熟考されていないのでは。
マリオン ★★★★☆
M・ナイト・シャマランを愛する者としては試練の1本だ。カルト宗教や陰謀論者が好む終末のシナリオが本当に起こることで、彼らを肯定しているように見えてしまう。しかし、シャマランは名もなき人々が世界を動かし、誰もが神話を持っていると本気で信じているとも言える。そして、世界か個人かという究極の選択はセカイ系的な葛藤や問いかけにも似ている。危うさを認めつつも、やっぱり僕はシャマランが好きで仕方がないのだ。
みえ ★★★★☆
不法侵入者に訳のわからないことを言われて拘束されて、世界の行方を託されて、何なのこの状況!?って思う話。それなのに最初から最後まで目が離せなくなるから、シャマラン監督はすごい。命がけの状況下で選択を迫られたとき、より明確になる人間性や、信じた方向に突き進む人間の得体の知れなさがリアル。そういえば私の好きなホラーって、荒唐無稽な状況に置かれた人間の行動や感情に真実を見るものだった、と納得した。
村山章 ★★★★☆
シャマラン自身はブレてない。むしろシャマラン純度(そんな言葉はないが)は上がっていて、だからこそ「お前はどこまでシャマランを受け入れるのか?」という問いを突きつけられる。もはやカルトの領域だと思うし、観る人それぞれの胸の内にしか答えはない。しかしテンションを煮詰めてどの瞬間も楽しませるぞ!というシャマラン式映画術は今回も冴え渡っており、文体を楽しむだけでもお釣りがくるクオリティは間違いなくある。
聖地には蜘蛛が巣を張る ↗
2022年/デンマーク、ドイツ、スウェーデン、フランス 4月14日公開
監督:アリ・アッバシ
出演:メフディ・バジェスタ二、サーラ・アミール・エブラヒミ
イランの聖地マシュハドで実際に起きた娼婦連続殺人事件を題材に、女性への加害や抑圧に満ちた社会を描くクライムサスペンス。女性ジャーナリストが危険を顧みずに事件を追う。『ボーダー 二つの世界』のアリ・アッバシが監督・脚本を務めた。
さとうかずみ ★★☆☆☆
Taul ★★★☆☆
フェミサイドを容認するようなイランの人々の描写の中に、日本で日常的に見たり感じたりしてることがいっぱいあって他人事でなく心が痛い。殺人鬼の家族の中に当然のような継承があり目に焼き付いた。そういう意味では殺人描写の数々より、邦題を借りれば「なぜ蜘蛛は巣は張るのか」といった社会の背景やミソジニーの意識に注力したほうがより問題提起がある作品になったのではないだろか。終盤の駆け足具合ももったいない。
まな ★☆☆☆☆
シリアルキラー実話モノで犯人の言い分や心理にフォーカスするような作品は、間違った方向から事件を消費しているようで年々無理になってきたし批判されることも多くなってきた。しかしこの作品は彼のような考えがいかに社会の中で醸成されていったのか、さらにそれが家族にどんな影響を及ぼしているかを描きたいのだということは理解できる。ただそのために女性への加害を執拗に生々しく見せるセンセーショナルさはいらない。
マリオン ★★★☆☆
16人の女性が殺害されたおぞましい連続殺人事件。その背景にある社会構造や価値観に目を向けると恐ろしい闇が見えてくる。国や宗教に関わらず、女性というだけで社会的に虐げられる現状はどこにでも存在し、殺人鬼が犯行を重ねれば重ねるほどに群衆に秘められていた女性嫌悪が浮き彫りになっていく。そして、ラストに待ち受けるいたたまれなさには吐き気を覚えた。このやり場のない気持ちをどうしたらいいのか、まだ分からない。
みえ ★★☆☆☆
娼婦を殺すのは社会の浄化である、と信仰を盾に連続殺人を正当化する男と、彼を応援する家族や社会。女性蔑視の現状を描いたと言われればわからなくはない。でも、自分に都合よく言い訳する主人公が、快楽殺人の隠れ蓑に宗教的理由を挙げただけに見えて、嫌悪感が先に立つ。そんな醜さも含めて問題提起したかったのかとは思うけれど、それでは社会問題より殺人鬼自身の問題が描きたかったように感じられ、違和感が残った。
村山章 ★★☆☆☆
実話ベースで、信仰や倫理観を盾に連続殺人を肯定する歪んだ大衆心理をあぶり出す。意図はわかる、わかるよ。でも社会批評が本格的に機能するのは犯人が捕まってからの後半で、前半の殺害シーンは見世物的な残酷ポルノにしか思えず、時折飛び出すブラックユーモアもノイズ。まだ自己が確立してない犯人の息子の存在が際立っていて、パトカーを追いかけて走るときの、当惑が貼り付いたような表情こそがこの映画のハイライト。
ひとことふたこと
2~3年おきにダイエットをしてるんだけど、だんだん簡単には痩せなくなってます(泣)。
『高慢と偏見』映像翻案作品マラソンが20本で一段落しました。好みを教えてもらえたらあなたに合う高慢と偏見お答えします。
新入社員と話していて驚いたのですが、京都にはサブウェイがないらしいです。どこにでもあると思っていたので衝撃でした。
4月17日開業のTOHOシネマズららぽーと門真に早速行ってきました。これで再び大阪府下のTOHOシネマズ全制覇。
U-NEXT配信中の「リハーサル -ネイサンのやりすぎ予行演習-」がリアルとヤラセの境目で暴れまくっていてとにかく凄まじい。