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ちひろさん ↗
2023年/日本 2月23日公開、配信
監督:今泉力哉
出演:有村架純、豊嶋花、嶋田鉄太、風吹ジュン、リリー・フランキー
海辺の小さな町にある弁当屋で働く元風俗嬢のちひろ。自由気ままに生きる彼女の存在が、周囲の人たちに影響を与え、彼らの人生を少しずつ変えていく。安田弘之の同名漫画を『愛がなんだ』の今泉力哉が実写映画化。
さとうかずみ ★★☆☆☆
Taul ★☆☆☆☆
生きづらさを抱える人たちを優しく肯定してあげるちひろさん。心温まるお話のはずだが、うすら寒く感じてしまった。今泉監督の日常を切り取る感じと相性が悪かったのでは。主人公はじめ登場人物の言動が浮いてて作り物っぽい。エピソードが多いこともあり、人の境遇から類型的な悩みをつくり安易に「いい話」に仕立てあげてるようにも感じた。SNSの情報で判断しがちな自分が気にかけてるとこで、どうも居心地が悪かった。
まな ★☆☆☆☆
公助の視点を欠いたまま、モラハラやネグレクト、貧困問題をふわっとしたヒューマンドラマに包んで何がしたいのか。その上初対面のおじさんを自宅の風呂で洗ってくれたり、弁当屋の客のセクハラ発言にとびきりの笑顔で応対したり、バッタリ会った別の客を突然セックスに誘ったり、ちひろ本人の奔放さより作り手の男目線のキモさばかり目立つキャラ造形。これをNetflixを通して世界に差し出されることに戸惑いを覚える。
マリオン ★★☆☆☆
深く立ち入らず、拒絶もしない距離感で他者との関係を築くちひろさんの哲学は居心地がいい。本質的な孤独からは逃げられない。それなら孤独を愛してあげたらいい。優しいメッセージに救われる思いがした。でも、本当にそれでいいのかなとも思う。確かに他者と分かり合えることなんてほとんどない。だからといって悟ったかのように生きるのは、はなから他者と深く関わることを諦めているようにも見えてもったいない気がした。
みえ ★★★☆☆
誰が相手でも分け隔てなく接する元風俗嬢のちひろさん。意見ははっきり言うけれど、自分の価値観が通じない相手には深入りしない。誰とでも楽しそうに過ごしているように見えるのに、同じ星から来たと思える相手にはほとんど出会えないと本人は感じている。いい人そうに見えるのに、つかみどころがないのは、たぶん誰とも必要以上に真剣に向き合っていないから。そんな彼女に自分と似たものを感じる私には、共感しかなかった。
村山章 ★★☆☆☆
失礼にもながらく有村架純という役者を侮っていたが、近年の腹の座った佇まいには感心しきりで、本作も誰に遠慮することなくそこにいる“有村架純”力によって目が離せない主人公になった。ただ、しがらみはないが包容力はあるマジカルな(元)風俗嬢に片っ端から癒やしてもらう展開は甘えがすぎて居心地悪い。人情噺としての軽さは利点もあると思うが、誰も彼も心を開くハードルが滅法低くてヒネクレ人種としてはどうにもノレない。
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス ↗
2022年/アメリカ 3月3日公開
監督:ダニエルズ
出演:ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ステファニー・シュー
コインランドリーの経営や家族との関係に頭を悩ませる中国系アメリカ人のエヴリン。ある日、夫のウェイモンドから「マルチバースを滅ぼす強大な悪を倒してほしい」と言われ…。第95回アカデミー賞で作品賞を含む最多7部門を受賞した異色のアクションムービー。
さとうかずみ ★★★★☆
Taul ★★★☆☆
マルチバースの遊び方とオチが面白い。人生ifの分岐の感慨に加え、ネットでいろんな世界を味わえるがふと我に返る感覚にも似ていた。石を使った母娘の場面がシュールで最高。あういう映像の飛躍が見たくて劇場に通ってる。ただそこ以外は弾け方が同じようなパターンが多いしくどくて、早くドラマに戻ってと飽きてしまうところがあった。期待し過ぎたかも。あの風変わりなダニエルズの新作かくらいのノリで出会いたかった。
まな ★★★★☆
まだまだステレオタイプな描写の多いアジア系のキャラクターを、これまでの歴史も活かしながらこんなにカッコよく可笑しく描いてくれたことへの喜びは何にも代え難い。しかし監督コンビの前作同様、意図やメタファーはわかっても、ふざけることが何より優先されているように感じられる場面が多々あり、後半の真摯なドラマにこちらのテンションがうまく切り替えられず。最後のウエストポーチの使い方は全ラブコメ脚本家保存版。
マリオン ★★★★★
選ばなかった人生の可能性であるマルチバースと選び取ってきた人生と家族の絆が接続する。大きいのか小さいのか分からないスケール感は巨大な世界と自意識が直結するセカイ系にも通じていて感動的。しかも、全力でくだらないことをやりきった果てに感動が待っているのがいい。ネガティブに陥った思考が一気にポジティブにひっくり返るクライマックスに、なんだか自分のすべてを肯定してもらえたような気がしてめちゃくちゃ泣いた。
みえ ★★★★☆
何が起こっているのか理解できないまま、同時進行で別の世界の話が始まり、画面が目まぐるしく展開する。映像の洪水に私の脳内の処理が追いつかず、話が頭に入らない。終始、見るのが辛いと思いながら、同時に、この感覚をありのままに映像化した作品は見たことがないと感嘆した。こんな母親に振り回され、衝突するばかりで理解し合えない母娘関係の物語のほうは、理解できすぎる。そこがまた辛くて、同時に面白かった。
村山章 ★★★★★
ダニエルズよ、本当にお前らケツネタが大好きだな!と、一貫した姿勢に呆れつつもアッパレ。いや、変わらないのはそれだけじゃない。バカバカしさのボリュームを上げることでエモさを生み出す異端の錬金術を2人はずっと試みていて、それが最もメジャーな形で結実した作品だと思う。苦悩に満ちた人生を一瞬でも反転させるにはかくも大風呂敷のホラ話が必要なのだという祈りにも似たメッセージ、勝手にしかと受け取りましたよ。
フェイブルマンズ ↗
2022年/アメリカ 3月3日公開
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:ガブリエル・ラベル、ミシェル・ウィリアムズ、ポール・ダノ
スティーヴン・スピルバーグが自身の子供時代をもとに、映画監督を志す少年の成長と家族の人生模様を描いた自伝的作品。幼い頃に衝撃を受けた映画館での体験が忘れられないサミー。母親から8ミリカメラをプレゼントされ、次第に映画づくりにのめり込んでいく。
さとうかずみ ★★★☆☆
Taul ★★★★★
郷愁に浸るような自伝とは一線を画す「映画についての映画」だった。家族の秘密を暴いたり、人を傷つけたりしてしまう映画の暴力性や、見る人を虜にするプロパガンダ的な危険性にまで言及。それらを自身の成長譚に落とし込み、さらには両親への愛というより懺悔に近い思いまで忍ばせる手腕に脱帽。お茶目なラストにまた不意をつかれる。自叙伝さえ観客を面白がらせることに終始するのがスピルバーグらしい。暫定今年ベスト。
まな ★★★☆☆
映画を作って観てもらうことの楽しさと感慨はやはり格別。嫌われているはずなのにカッコよく撮られて困惑してしまういじめっ子や、ユダヤ人フェチのガールフレンドら個性的な面々とのシーンでは、優等生的な主人公も輝く。しかし母親の不倫に端を発する家族のゴタゴタの中では、あまりに視点が主人公中心すぎて興味が持てない。劇中でいじめっ子と堂々と対峙したように、両親の存命時にこれを撮ればよかったのでは。
マリオン ★★★★★
スピルバーグの分身である少年と離婚してしまう両親とのエピソードが印象的だ。少年は、愛に生き、愛ゆえに別れる両親の心情を知るが、彼はただ撮ることしかできない。修羅場と化した家族会議で、どうやってこの光景を撮るかを幻視してしまうのは映画を愛してしまった者の性だろう。少年も両親も方向性は違えど愛に生きる人なのだ。たとえ人でなしに見えても、愛に一途な者にしか分からない世界がある。その景色に心動かされた。
みえ ★★★★☆
幼少期に映画に釘付けになった少年が、観た映画を再現して撮り始め、撮影や編集に工夫を凝らして映画に真実味を与える術を見出していく。見せたい物語を見せる技術を磨いていく過程で、思いがけず映してしまう物事の側面に動揺したり、映した世界のとらえ方が原因で衝突したり。そんなスピルバーグ監督の自伝的物語には、映画に期待する虚構と真実が詰まっていて、喜怒哀楽たっぷりの青春がとても良かった。
村山章 ★★★☆☆
とてつもなく面白いシーンとそうでもないシーンが混在してる。面白い部分はほぼ他人絡みで、そうでもない箇所は自分=主人公メインなのは、自伝なのに本人が恥を晒せてないせいではないか。とはいえセス・ローゲンにもらったBOLEXのカメラをわだかまりから封印したのに、ARRIFLEXの魅力には抗えないあの気持ち、BOLEXさんに謝れ!とは思うが正直わかる。ARRI触りたい欲とイジメっ子の揺らぎに激しく共感しました。
長ぐつをはいたネコと9つの命 ↗
2022年/アメリカ 3月17日公開
監督:ジョエル・クロフォード
出演:アントニオ・バンデラス、サルマ・ハエック・ピノー、フローレンス・ピュー
『シュレック』シリーズに登場する人気キャラクターの活躍を描いたアニメ映画第2作。9つあった命が残り1つになったプスは、凶悪な賞金稼ぎに付け狙われて隠居生活を余儀なくされる。しかし、願いを叶えてくれる「願い星」の噂を聞きつけ、再び冒険の旅に出る。
さとうかずみ ★★★★☆
Taul ★★★☆☆
前作から3DCGが綺麗になったうえ、流行りの2Dの漫画風のタッチを入れ込むなど凝ってて飽きさせない。ラテン系でちょい悪のネコが一旦剣を置くのがマッチョイズムを脱ぎ捨てるかのようで面白い。敵も味方も自分らしくあることに収束するクライマックスも今時な展開だ。ここまでやるならよくある戦いの場とは違うラストに挑戦してもよかったのでは。登場キャラが多いわりにすべて予定調和に終わった感じで無難な印象が残った。
まな ★★☆☆☆
吹き替え版の上映ばかりなのは非常にもったいない。プスを演じるアントニオ・バンデラスのセクシーな声と、犬のペリートを演じるハーヴィー・ギーエンのキュートな声がこの作品の何よりの魅力だというのに。それ以外は、血の繋がらない家族やパニック発作といった現代的な要素を取り込もうとしているのはわかるが、全体の流れが無難なために心に残らず。アニメ表現も一見魅力的だが何でもありでは疲れる。
マリオン ★★★★☆
『スパイダーマン:スパイダーバース』が切り開き、『バッドガイズ』でも取り入れられた、手描きイラスト的なテイストと3DCGを組み合わせたアニメーションが最高だった。ケレン味たっぷりに使われる漫画的な視覚効果やメリハリのあるアクション、グラフィカルでかっこいい構図、ダイナミックなカメラワークなどすべてが一級品。冒頭は『進撃の巨人』の立体機動装置シーンを思い出した。プスたちの活躍がもっと見たくなる快作。
みえ ★★★★☆
冒頭から、アニメ映画の動きってこんな見せ方だっけ?と思うほど、観たことのない躍動感あるアクション場面に魅了された。映像が実写のようにリアルになっていく印象のあったアニメ映画の逆を行くように、漫画のカット割りを見ているみたい。それでいてダイナミック。アクション以外では、瞳をキラキラさせて笑いを誘ったり、歌ったり、最後の命を狙われて怖気づいたり。楽しませてくれる要素が満載だった。
村山章 ★★★★☆
3DCGに手描きアニメのタッチを組み合わせる手法は明らかに『スパイダーマン:スパイダーバース』以降で、作り手が目の前に広がった可能性を楽しんでるのが伝わってくる。カットの繋がりを大胆に省略したりコマ数を落としたり象徴的なカッコいい絵をバンバン挟んだり、奇しくも『シン・仮面ライダー』がやってることと共通してるんだが、元ネタがない分より自由にハッチャケていてワクワクする。懐かしくて新鮮で刺激的。
コンペティション ↗
2022年/スペイン 3月17日公開
監督:ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン
出演:ペネロペ・クルス、アントニオ・バンデラス、オスカル・マルティネス
大富豪の思い付きから始まった映画製作。オファーを受けた変わり者の天才監督はベテラン舞台俳優と世界的映画スターを呼び寄せ、リハーサルに臨むのだが…。華やかな映画業界の裏側を描いたブラックコメディ。
さとうかずみ ★★★★★
Taul ★★★★☆
一流の映画人たちのエゴとプライドが火花を散らすリハーサル現場。スタイリッシュな建物を背景にカッコいい構図で見せるが、そこで彼らがみっともなく蠢いている絵面になっているのが可笑しい。ペネロペ・クルスがエキセントリックな監督で、アントニオ・バンデラスはセクシーな男優と、ギャップやパロディでも笑わせる。よく聞くゴシップのようなエピソードも多く、映画制作のホントのところを垣間見た気分に。シニカルで面白い。
まな ★★☆☆☆
大物監督と俳優たちとの滑稽なやり取りに大いに笑った。それぞれにどんどん愚かさが際立っていく男性俳優2人に比べ、変わり者だったはずの女性監督がだんだん2人に呆れるポジションになり真面目に見えたのが残念。後半の大きな展開もそれを助長しているようだった。『長ぐつをはいたネコと9つの命』のネコ役とちがって全然セクシーでなかったアントニオ・バンデラスがすごい。
マリオン ★★☆☆☆
映画業界の裏側にある下衆な本質よりも、男たちが誇示し合うプライドがいかにちっぽけかを描きたいように感じた。舞台出身のベテラン俳優と映画界で活躍するスター俳優。傑作を作るために集結したはずなのに、ふたりは相手のキャリアや演技スタンスを見下し、自分を愛でるばかり。作品のために少しだけプライドをへし折ろうとしていたはずの監督が、ふたりのマウント合戦にだんだん呆れ気味になるのが可笑しかった。
みえ ★★★★★
天才肌の映画監督、演技派ベテラン俳優、スター俳優の3人が、撮影前にリハーサルを重ねる様子が描かれる。だから動きの少ない会話劇が大半。音楽も少ない。でも空間の使い方や切り取り方が見事で、引き込まれた。3人の位置関係に力関係が見え、鏡やスクリーン越しの顔に、自我や偽りが映る。次はどんな画を見せてくれるのかと終始ワクワクしながら、クセだらけの登場人物が滑稽にぶつかる物語を追うのが快感だった。
村山章 ★★★★☆
演技とは、演出とは、映画とは、みたいな根源的な問いを思い切りバカバカしく笑い飛ばす皮肉が心地いい。主人公の役者2人と彼らがリハーサルで演じる役柄が、ペネロペ扮する映画監督のムチャぶりで混ぜっ返され、さらにそのすべてを現実の役者が演じていることも意識させられるメタ感など、幾重にも張り巡らされた演技のカラクリに疑心暗鬼になりそう。ペネロペのネクストレベルに突入したような怪演もファンとして嬉しい限り。
ひとことふたこと
オスカー関連作を追う、花粉症の対策、WBC、仕事のピークと振りまわされたが、何とか乗り切りるとこまでもうすぐ。
アバターショックで2カ月休んでしまいました。マジック・マイクの新作を観た帰りに終電を逃しました。
職場に着ていく服のレパートリー少ない問題を解決するために服をめっちゃ買った。ありがとう無印良品週間。
『マジック・マイク ラストダンス』を大きなスクリーンで観るため、MOVIX八尾に初来訪。映画も映画館も最高でした。
スナックパンもしくはスナックスティックのどれが美味いか9種類食べ比べました。一位はミニストップ。 https://onl.sc/r3fiAy3